ケアのTomorrow Life

第1回「地域包括ケアとは」

[ 高齢者住宅新聞 9月5日号 ]

白澤 政和 氏 | 桜美林大学大学院老年学研究科 教授

今回の介護保険制度の改正は「地域包括ケア」の推進にあるとされている。ただ、この用語は前回の2005年介護保険法改正の際にも使われていた言葉であり、また、専門的にはそれ以前から使われてきた用語でもある。

サービスが利用者に届く仕組みづくりを

今回意図されている「地域包括ケア」は、1つには地域包括ケア研究会が『地域包括ケア研究会報告書』(平成22年3月)で提唱した考え方である。もう1つは、厚生労働省が示す「地域包括ケア」がある。両者には基本的に違いはないが、まずはそれらを紹介しておく。
 
前者の地域包括ケア研究会の報告書での地域包括ケアの定義は、「ニーズに応じた住宅が提供されることを基本とした上で、生活上の安全・安心・健康を確保するために、医療や介護のみならず、福祉サービスを含めた様々な生活支援サービスが日常生活の場(日常生活圏域)で適切に提供できるような地域での体制」であるとしている。その際、地域包括ケアの圏域については、誰かは分からないが、「おおむね30分以内に駆けつけられる圏域」を想定し、中学校区を基本にすることを提案している。
 
一方、厚生労働省が示す「地域包括ケア」は、「利用者のニーズに応じて適切にサービス提供がされること」を包括の意味としている。さらに、これらのサービスが入院、退院、在宅復帰を通じて、切れ目なく継続的に提供されることを挙げている。
 
両者ともに、地域包括ケアが目指す目的は、高齢者ができる限り長く地域社会で生活が続けられることにある。
そのため、まずは地域包括ケアで考えなければならない包括の意味を整理しておきたい。地域包括ケアの「包括」には、いくつかの意味が込められているが、大きくは、以下の3点を実現することであるといえる。
 
第1は、利用者のニーズから導き出される保健・医療、介護、住宅、時には雇用や社会参加等のサービスが包括的に準備され、提供されることである。このように提供されるサービスが多面的であることが、包括の意味である。
第2は、セルフケア、インフォーマルケア、フォーマルケア、あるいは、自助、互助、公助が活用される仕組みをつくりあげていることである。これは、ケアが包括的に提供されることである。
第3は、介護保険制度のもとでの要介護・支援高齢者を対象にするだけでなく、高齢者全体を対象にするものである。将来的には、生活圏域のすべての住民を対象とするものである。このように地域の全住民を対象にすることが包括の意味である。これについては、将来に向けての課題であろう。
 
さらに、継続的なケアが加わると、これらのシステムが、利用者のニーズの変化に合わせて連続してケアが提供されていくことである。包括的ケアが空間的に利用者の生活を支えるとすれば、継続的ケアは利用者の生活を時間の変化に合わせて支えることである。
 
厚生労働省は、この地域包括ケアを、具体的に医療、介護、生活支援、介護予防、住宅の5つのサービスをあげ、これらのサービスを充実し、利用者が活用していくことで、地域包括ケアを推進していこうとしている。それらの具体的な内容は、以下の通りである。
 
①医療との連携強化
・24時間対応の在宅医療、訪問看護やリハビリテーションの充実強化
・介護職員によるたんの吸引などの医療行為の実施
②介護サービスの充実強化
・特養などの介護拠点の緊急整備(平成21年度補正予算:3年間で16万人分確保)
・24時間対応の定期巡回・随時対応サービスの創設など在宅サービスの強化
③予防の推進
・できる限り要介護状態とならないための予防の取組や自立支援型の介護の推進
④見守り、配食、買い物など、多様な生活支援サービスの確保や権利擁護など
・一人暮らし、高齢夫婦のみ世帯の増加、認知症の増加を踏まえ、様々な生活支援(見守り、配食などの生活支援や財産管理などの権利擁護サービス)サービスを推進
⑤高齢期になっても住み続けることのできる高齢者住まいの整備(国交省と連携)
・一定の基準を満たした有料老人ホームと高専賃を、サービス付高齢者住宅として高齢者住まい法に位置づけ
 
地域包括ケアを推進していくためには、確かに介護保険のサービスだけでなく、様々なサービスを充実させていくことが必要不可欠である。①から⑤のサービスのいくつかは、「介護保険法」「社会福祉士及び介護福祉士法」「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」等が改正されたことで、新たに実現することになっているサービスである。
 
ただ、これらは地域包括ケアを構成するサービスの充実に過ぎず、厚生労働省がいう包括的・継続的なケアが提供できる地域のシステムの具体的なつくり方については漠然としている。
地域包括ケアの仕組みをつくりあげるためには、個々のサービスを充実させるかだけでは不十分である。さらに、利用者のニーズに合わせてサービスが利用者に届けられていく地域包括ケアのシステムが必要不可欠である。
 
こうしたことから、次回より地域包括ケアの具体的な仕組みについて探っていきたい。

しらさわ・まさかず プロフィール
桜美林大学大学院老年学研究科教授。社会学博士。 1949年三重県名名張市生まれ。74年大阪市立大学大学院修士課程修了。94年大阪市立大学生活科学部人間福祉学科教授を経 て、現職。日本学術会議会員、日本在宅ケア学会理事長、日本社会福祉学会会長。 近著に『「介護保険制度」のあるべき姿』(筒井書房)2011年、「キーワードでたどる福祉の30年」(中央法規出版)2011年。 日本で最初にケアマネジメントに関する論文や著書を書き、日本の土壌でのケアマネジメントを提唱。最近では、ストレングスに 視点を当てたケアマネジメントの方法についての研究を焦点にしている。