ケアのTomorrow Life

第2回「『地域包括ケア』のシステム」

[ 高齢者住宅新聞 9月25日号 ]

白澤 政和 氏 | 桜美林大学大学院老年学研究科 教授

確かに、国は地域包括ケアの理念と、地域包括ケアに含めるべきサービスは示した。この含めるべき介護、医療、住宅、生活支援、介護予防といったサービスが利用者に届けられるためには、サービスを新たに開発するだけでは十分ではない。

地域包括ケアが理念倒れで終わらないために

介護、医療、住宅、生活支援、介護予防の5つのサービスが利用者に適切に届けられるサービス・デリバリー・システムを確立することこそが、地域包括ケアの最終目標である。それには、ケアマネジャーによる個々の利用者にサービスを届けるデリバリー・システムを確立することに加えて、利用者にサービスが届けられやすい土台となる仕組みを、生活圏域で作りあげることである。
 
実際、2006(平成18)年10月18日に「地域包括支援センターの設置運営について(通知)」が老健局計画課長から出されているが、センター開設直後から、地域でのネットワークづくりの重要性が、明確に指摘されている。
 
包括的支援事業を効率的かつ効果的に実施するに当たっては、介護サービスに限らず、地域の保健・福祉・医療サービスやボランティア活動、インフォーマルサービスなどの様々な社会的資源が有機的に連携することができる環境整備を行うことが重要である。このため、こうした連携体制を支えるものとして「地域包括支援ネットワーク」を構築することが必要である。「地域包括支援ネットワーク」は、地域の実情に応じて構築されるものであるが、例えば、行政機関、医療機関、介護サービス事業者、地域の利用者やその家族、地域住民、職能団体、民生委員、介護相談員及び社会福祉協議会等の関係団体等によって構成される「人的資源」からなるネットワークが考えられる。こうした地域包括支援ネットワークの構築は、センターの基盤整備のために各職員に共通する業務として位置づけることが必要であり、職員全員が情報を共有し、ネットワークに参加するメンバー相互の関係づくりや連携の継続性の維持に取り組むことが必要である。
 
こうした通知があったにも関わらず、現実には地域包括支援センターの生活圏域内での団体・機関のネットワークづくりは十分に進まなかった。
 
具体的に、ここに示したイメージ図は、地域包括ケアのシステムを構造化したものである。ここでは、居宅介護支援事業者のケアマネジャーが個々の利用者・家族に対して様々なサービスを提供している。一方、地域包括支援センターが生活圏域内でのサービスの提供・受給に関係する団体・機関間でのネットワークを構築し、さらには個々の団体・機関が有効に機能するよう支援しているイメージ図である。
 
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地域包括支援センターがこのような団体・機関間でのネットワークを確立することができれば、ケアマネジャーはそのネットワークに含まれている団体や機関のサービスを活用しやすくなる。この地域包括支援センターのネットワークの中に、自治会、民生委員連合会、老人クラブ、女性団体等の既存のインフォーマルな団体が含まれることになれば、ケアマネジャーはこうした団体の支援を利用者のために活用しやすくなる。また、医師会や高専賃の代表が地域でのネットワークに参加いただければ、ケアマネジャーは利用者に最適な医療サービスや住宅サービスを円滑に提供することができるようになる。
 
このような土台が生活圏域で確立できれば、地域包括支援センターの中核機能である4つの包括的支援事業が円滑に実施可能となる。これらの事業は、①介護予防ケアマネジメント業務、②総合相談支援業務、③権利擁護業務、④包括的・継続的ケアマネジメント支援業務であるが、それぞれがうまく機能する土台ができることになる。
 
一方、ケアマネジャーが個々の利用者に活用しているサービスの団体・機関を地域包括支援センターがネットワークのメンバーに加えていくことで、生活圏域での団体・機関のネットワークがより強固で広範なものとなっていく。
 
この図において、ケアマネジャーは個々の利用者に対して、既にケアプランを作成し、その支援を行ってきている。他方、地域包括支援センターは要支援者のケアマネジメントに多くの時間が割かれ、地域の団体・組織を組織化していくことに十分時間をとることができなかった。さらに言えば、多くの地域包括支援センターは、地域の組織や団体のネットワークづくりの必要性や重要性は理解しているが、どのようにすればネットワークがつくれるかの方法が分からないのが現状である。
 
そのため、今回の介護保険法改正では、地域包括支援センターの機能強化を目指して、以下のような条文が加えられた。
 
「地域包括支援センターの設置者は、包括的支援事業の効果的な実施のために、介護サービス事業者、医療機関、民生委員、ボランティアその他の関係者との連携に努めなければならないものとすること」(第百十五条の四十六第五項)
 
「市町村は、包括的支援事業の実施に係る方針を示して、当該事業を委託するものとすること」(第百十五条の四十七第一項)
 
これらの条文には、地域包括支援センターが地域包括ケアの土台を作ってほしいという思いが如実に示されており、それなりに評価したい。
 
しかしながら、地域包括支援センターがどのようにして機関や団体を連携させ、ネットワークをつくっていくのかの具体的な方法が分からなければ、地域包括ケアの土台作りは理念倒れで終わることになる。そのため、次回は、どのようにすれば、地域の団体・組織のネットワークがつくれるかの方法を紹介したい。

しらさわ・まさかず プロフィール
桜美林大学大学院老年学研究科教授。社会学博士。 1949年三重県名名張市生まれ。74年大阪市立大学大学院修士課程修了。94年大阪市立大学生活科学部人間福祉学科教授を経 て、現職。日本学術会議会員、日本在宅ケア学会理事長、日本社会福祉学会会長。 近著に『「介護保険制度」のあるべき姿』(筒井書房)2011年、「キーワードでたどる福祉の30年」(中央法規出版)2011年。 日本で最初にケアマネジメントに関する論文や著書を書き、日本の土壌でのケアマネジメントを提唱。最近では、ストレングスに 視点を当てたケアマネジメントの方法についての研究を焦点にしている。