ケアのTomorrow Life

第3回「地域の団体・機関のネットワークづくりの方法」

[ 高齢者住宅新聞 10月5日号 ]

白澤 政和 氏 | 桜美林大学大学院老年学研究科 教授

地域包括支援センターが実施しなければならない包括支援は、①介護予防ケアマネジメント業務、②総合相談支援業務、③権利擁護業務、④包括的・継続的ケアマネジメント支援業務である。

地域ニーズの把握を基本に

これらの事業を円滑に進めていくためには、地域の団体・機関間でネットワークを構築することが土台である。そのため、地域包括支援センターは地域の団体・機関間のネットワークづくりについてのノウハウを学び、実行していくことが必要である。

地域包括支援センターでのネットワークのつくり方は、ケアマネジャーがケアプラン原案を作成することと基本的に同じである。生活圏域での地域の生活ニーズを明らかにし、それらをもとに地域支援計画原案を作成することである。
地域のニーズ把握については、地域ケア会議で検討した事例が活用されたり、ケアマネジャーや自治会役員・民生委員等からの聴き取りでもって得られることもある。時には、生活圏域の高齢者調査を実施し、ニーズを明らかにすることもある。

地域支援計画の原案には、地域のニーズを満たすために、地域の団体や機関が共同して様々な活動を行っていくことが計画される。ここでは、ある地域包括支援センターが「関係機関同士の連携ネットワークづくり」をケース目標にして作成した地域支援計画を示しておく(表)。全国地域包括・在宅介護支援センター協議会『地域包括支援センターなどによる地域包括ケアを実践するネットワークの構築の進め方に関する調査研究事業』(平成23年3月)50頁を一部修正

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さらに、ケアマネジメントでのサービス担当者会議と同様に、地域支援計画原案を既に設置されている運営協議会で話し合い、そこの会議で合意を得て、計画を実行に移していく。
この会議に先立って、職員は活動をしてもらう団体・機関に対して根回しが必要な場合もある。会議では、それぞれの団体・機関の参画のもと、原案が検討され、時には原案が修正されることになる。当然、計画には未だ参加していない団体・機関が含まれる場合がある。また、団体や機関が母体組織にもち返り、検討してもらうこともある。

運営協議会の実態は、毎年事業や収支の計画や実施状況の報告を受けることで終始しているのが現実である。ただ、「地域包括支援センターの設置運営について(通知)」では、運営協議会について大変重要な記述がある。それは、「運営協議会は、地域における介護保険以外のサービス等との連携体制の構築、地域包括支援ネットワークを支える地域の社会的資源の開発」を行うとしている。ここに、運営協議会を介して、地域支援計画を実行に移していくことが、地域の団体・機関のネットワークづくりのポイントである。

地域包括支援センターが包括的支援事業を推進していく上では、生活圏域の人々の生活ニーズに基づき計画を作成し、実行していくPDCAサイクルが不可欠である。このことは、地域の団体・機関のネットワークをつくりためには、団体・機関が協力し合って、地域のニーズに合った様々な活動を行っていくことが基本になる。この具体的な活動内容としては、定期的な会議、研修会の開催、介護予防活動、パンフレットや福祉マップづくり、連絡体制づくりといったことが含まれる。

地域の団体・機関のネットワークは、地域のニーズに対して団体・機関が協力しながら活動することでもって、結果として生まれてくるものである。このことは、既に存在する運営協議会の機能を強化することでもある。

地域支援計画の作成・実施という具体的な提案をするのは、様々な団体・機関が共同して活動していく根拠に、生活圏域の生活ニーズをベースにする必要があるからである。ニーズを無視した活動は、住民の思いから遊離したものとなり、長続きがせず、ひいてはネットワークづくりにはならない。

同時に、計画が作成・実施されれば、表のように、地域包括支援センターの業務が可視化でき、地域住民からの理解が得られ、認知度を高めていくことになる。また、この計画を実施していくことが、4つの包括支援事業を直接的・間接的に推進していくことになる。

表は一例に過ぎないが、この計画が定期的にモニタリングされ、活動が継続的に進められることになる。さらに表以外にも、虐待予防、認知症の人を地域で支えるといった別個のケース目標でも地域支援計画を作成し、実施し、モニタリングしていくことになる。

地域支援計画は、ケアマネジャーが個人のケアプランを作成・実施していくことと対をなすことであり、両者は相互に補完し合う、連続性のあるものである。ケアマネジャーは在宅介護支援センター時代からケアプラン作成に20年以上の経験を重ね、今日を迎えている。そのため、個人のネットワークづくりについては一定の成果を得ている。他方、地域包括支援センターは計画作成のスタート台に立ったばかりであり、あまり時間をかけられないが、ピッチを上げて地域支援計画の作成・実施を地域の団体・機関の参加のもとで、地に付いたものとしていく必要がある。そのことが、地域包括ケアを確立する礎となる。

しらさわ・まさかず プロフィール
桜美林大学大学院老年学研究科教授。社会学博士。 1949年三重県名名張市生まれ。74年大阪市立大学大学院修士課程修了。94年大阪市立大学生活科学部人間福祉学科教授を経 て、現職。日本学術会議会員、日本在宅ケア学会理事長、日本社会福祉学会会長。 近著に『「介護保険制度」のあるべき姿』(筒井書房)2011年、「キーワードでたどる福祉の30年」(中央法規出版)2011年。 日本で最初にケアマネジメントに関する論文や著書を書き、日本の土壌でのケアマネジメントを提唱。最近では、ストレングスに 視点を当てたケアマネジメントの方法についての研究を焦点にしている。