ケアのTomorrow Life

第4回「地域包括支援センター業務範囲の再検討」

[ 高齢者住宅新聞 10月25日号 ]

白澤 政和 氏 | 桜美林大学大学院老年学研究科 教授

地域包括ケアのシステムを構築していくためには、地域包括支援センターの役割が大きい。そのため、地域包括ケアを進めていくうえで、地域包括支援センターは不要な業務を整理し、業務範囲を再検討する必要があろう。

健康高齢者の介護予防活動 積極的に

業務範囲が広範囲になっており、地域包括ケアの本来の業務が推進できていないこと、さらにはケアマネジャーとの役割分担が不明瞭になっていることが指摘されている。
 
地域包括支援センターは、中核になる包括的支援事業に加えて、要支援者に対するケアプランを作成する指定介護予防支援事業を行っている。これは、要支援者へのケアマネジメントであるが、この業務に地域包括支援センター職員は多大な時間を割き、他の事業ができていないとされている。そのためケアマネジャー一人に付き8ケースまでの委託について再検討すべきである。
 
個人的な意見としては、要介護者のケアプランをすべてケアマネジャーに戻すべきだと考えている。国は地域包括支援センターにやっと引き入れたものを再度戻すことはしないであろう。そのため、委託可能ケースを8ケースから増大することしか道がないのだろう。
 
ただ2005年の介護保険法改正で要支援者と要介護者の間での生活の連続性が崩れさせられた部分については、至急改善されなければならない。これを完全に解決する方法は、すべての利用者のケアマネジメントをケアマネジャーが実施することしかない。
地域包括支援センターの包括支援事業には、以下の4つである。
 
①介護予防ケアマネジメント業務は、特定高齢者(現在は、2次予防事業対象者)の介護予防のために、適切なケアマネジメントを行うことである。
②総合相談支援業務は、高齢者の相談を総合的に受けとめるとともに、訪問して実態を把握し、必要なサービスにつなぐことである。
③権利擁護業務は、権利を侵害されている高齢者が、地域で尊厳のある生活を送ることができるよう、権利侵害の予防や対応を専門的に行うことである。
④包括的・継続的ケアマネジメント支援業務は、介護支援専門員が包括的・継続的にケアマネジメントを実践することができるように地域の基盤を整えるとともに、介護支援専門員へのサポートを行うことである。
 
前回示した地域支援計画を作成・実施すること自体が、③や④を直接実現することにもなる。さらに、計画の作成・実施自体が①から④の包括的支援事業の土台を形成するものとなる。
ただ、①の介護予防ケアマネジメント業務については、「地域支援事業の実施について」(厚生労働省老健局長平成22年8月6日、老発0806第1号)の通知により、特定高齢者に対するケアプランは原則廃止になった。これは、特定高齢者へのケアプランが有効でないことをさらけだしたことになる。また、医師の診察等を含む生活機能評価による特定高齢者のスクリーニングが市町村の任意によることになり、特定高齢者の発見がさらに困難な状況になっている。
 
そのため、特定高齢者のスクリーニングそのものを廃止し、①の介護予防ケアマネジメント事業を廃止する方向で、根本的に見直すことを提案したい。2次予防事業対象者に対する口腔ケア、運動器の機能向上、栄養ケアマネ等の介護予防プログラムについては、継続するのであれば、一次予防事業対象者である健康な高齢者や要支援者が活用できるようにすべきである。
 
このことは、決して介護予防自体を否定するものではない。健康な高齢者全体である1次予防事業対象者を対象に、そうした高齢者の参加を得て、「ラジオ体操」や「太極拳」等のグループ活動である介護予防活動を積極的に生活圏域で実施していくべきである。当然、地域のニーズに基づき健康高齢者の介護予防に向けての地域支援計画の作成も重要である。
 
この結果、地域の団体や機関の参加を得て、地域包括支援センターは、地域のニーズに基づく地域支援計画を作成し、計画を実施していけば、それ自体が②から④の事業を推進していくことになる。さらには、計画の実施により、間接的に、総合相談件数が増え、虐待の発見数が増え、ケアマネジャーからの相談ケースが増加してくる。また、川下ではなく川上での介護予防が推進されることになる。
 
ここに、地域包括支援センターが中心で形成していく地域包括ケアのシステムがつくりあげられる。

しらさわ・まさかず プロフィール
桜美林大学大学院老年学研究科教授。社会学博士。 1949年三重県名名張市生まれ。74年大阪市立大学大学院修士課程修了。94年大阪市立大学生活科学部人間福祉学科教授を経 て、現職。日本学術会議会員、日本在宅ケア学会理事長、日本社会福祉学会会長。 近著に『「介護保険制度」のあるべき姿』(筒井書房)2011年、「キーワードでたどる福祉の30年」(中央法規出版)2011年。 日本で最初にケアマネジメントに関する論文や著書を書き、日本の土壌でのケアマネジメントを提唱。最近では、ストレングスに 視点を当てたケアマネジメントの方法についての研究を焦点にしている。