ケアのTomorrow Life

第5回「地域包括支援センターと他機関との関係の整理」

[ 高齢者住宅新聞 11月5日号 ]

白澤 政和 氏 | 桜美林大学大学院老年学研究科 教授

地域包括支援センターの包括支援事業の実施主体は市町村であり、直営で実施している場合と、民間に委託している場合がある。平成22年4月末で、4065ヵ所の地域包括支援センターがあるが、その内訳は、直営が3割で、残りの7割が委託となっている。

社会福祉協議会との協働を

直営は農村部に多く、委託は都市部に多いという特徴がある。7割の委託のセンターの内訳は、「社会福祉法人(社協除く)」37・0%、「社会福祉協議会」12・9%、「医療法人」11・9%の順になっている。「株式会社」や「NPO法人」にもごく一部委託されている。
 
地域支援計画を作成・実施するにあたって、委託の場合には、実施主体である行政との連携が不可欠である。そこには、市町村の指導性が問われ、地域支援計画の作成・実施の過程を両者が一体的に進めていく必要がある。そのため、両者が地域包括ケアの推進を最終目標と定めて、地域の団体・機関のネットワーキングを進めていく必要がある。
 
地域支援計画原案を検討することになる運営協議会は、『地域包括支援センターの設置運営について(通知)』では、「原則として、市町村ごとに1つの運営協議会を設置する」となっている。
 
私の意見は、1つ以上のセンターを設置している市区町村では、市区町村全体の運営協議会と、個々のセンターごとにサブの運営協議会を設置すべきであると考えている。これは、地域包括支援センターが設置されている生活圏域を基本にして地域包括ケアを推進していく以上、生活圏域を基本単位にして、運営協議会も組織されるべきである。『地域包括支援センターの設置運営について(通知)』では、1市町村1運営協議会は原則に過ぎず、1市町村に複数のセンターを設置することは十分可能である。個々のセンターに運営協議会がそれぞれ設置され、地域支援計画原案について協議会に参加する団体や機関が検討し、それぞれの団体や機関が計画に盛られた活動内容を実施していくことである。これができれば、それぞれの生活圏域に合った独自性のある地域包括ケアを形成していくことができる。
 
もう一つの課題は、こうした地域包括支援センターの活動が活発化してくると、それぞれの市町村社会福祉協議会の活動とバッティングしてくることである。社会福祉協議会の活動は、高齢者に特化したものではなく、地域住民全体を対象にしたものではあるが、地域の中でネットワークづくりを目指していることが類似している。そのため、既に多くの市町村では両者間で葛藤が生じていることを、耳によくする。
 
同時に、第1回目にも述べたが、地域包括ケアは、将来的には高齢者だけでなく、すべての住民を対象にするようになっていくと考えられ、また既に障がい者や児童の問題も含めて対応している地域包括支援センターもあり、今後さらに両者間でバッティングしていくことが想定される。
 
こうした状況を、競争原理の下でどちらかが淘汰されていくべきとするのか、両者の機能を調整していくのかが問われている。個人的な考え方としては、十分に機能できない組織は最終的には淘汰されるべきであると考えるが、現状ではそれぞれの特性を生かしながら、役割分担をしていくことが必要であると考えている。
 
地域包括支援センターは、地域ケア会議での個別の支援困難事例をもとにして、それと類似の困難事例を加えて、明らかになる地域ニーズをもとに地域での活動内容を地域支援計画として作成し、実施していく。一方、社会福祉協議会は地域全体の実態把握から、地域のニーズを明らかにし、市町村の地域福祉活動計画の作成・実施をもとに、地域の社会資源の開発・修正や育成を行っていく。
 
同時に、地域包括支援センターと社会福祉協議会はお互いに他方のメンバーとして参加し、常に情報交換をし、相互の活動が円滑に進むよう支援し合っていくことが不可欠である。
時には、地域包括支援センターでの地域支援計画の活動内容と市町村社会福祉協議会の地域福祉活動計画の内容が類似する場合もあろう。そうした場合には、活動単位が生活圏域と市町村との違いがあるとしても、計画内容を調整しながら、協働して活動を展開していくことが可能となる。
 
12・9%の地域包括支援センターは社会福祉協議会に委託されており、こうしたセンターは社会福祉協議会と一体であり、活動が円滑に進むように一見思える。しかしながら、これについても、地域包括支援センターと社会福祉協議会の発想には違いが大きく、インフォーマルサービスについて前者は活用していく視点が強く、後者は育成していく視点が強い。そのため、地域包括ケアという共通した目標をもちづらいことが明らかになっている。
 
そのため、両者が同じ組織に属している場合でも、そうでない場合でも、地域包括ケアを推進していくのだという目標を共有化することがまずは基本である。例えば、社会福祉協議会は、ボランティアの育成や福祉系のNPOを育成していくことが基本的に得意な分野である。一方、地域包括支援センターは個別事例から地域ニーズを見つけ出していくことが得意である。両者の良さを発揮しながら、地域包括ケアを進めていくことがポイントである。
 
インフォーマルケアを育成していくことも、活用していくことも、両方必要であり、両者でもって始めてインフォーマルケアは有効に機能することになる。

しらさわ・まさかず プロフィール
桜美林大学大学院老年学研究科教授。社会学博士。 1949年三重県名名張市生まれ。74年大阪市立大学大学院修士課程修了。94年大阪市立大学生活科学部人間福祉学科教授を経 て、現職。日本学術会議会員、日本在宅ケア学会理事長、日本社会福祉学会会長。 近著に『「介護保険制度」のあるべき姿』(筒井書房)2011年、「キーワードでたどる福祉の30年」(中央法規出版)2011年。 日本で最初にケアマネジメントに関する論文や著書を書き、日本の土壌でのケアマネジメントを提唱。最近では、ストレングスに 視点を当てたケアマネジメントの方法についての研究を焦点にしている。