ケアのTomorrow Life

第6回「『地域包括ケア』の推進により被災地の復興を」

[ 高齢者住宅新聞 11月25日号 ]

白澤 政和 氏 | 桜美林大学大学院老年学研究科 教授

地域包括ケアの理念や具体的な展開方法を述べてきたが、被災地の復興もこのような発想で対応していくことを提案したい。

地域包括ケアで復旧・復興を

現在、一部の地域を除いて、被災者は避難所から仮設住宅に移行しているが、従来の近隣との関係が十分に配慮されず仮設住宅に入居することで、今までの人間関係が失われ、共同体意識や地域活動が弱くなっている仮設住宅もごく一部あると聞いている。阪神淡路大震災においても、仮設住宅への移行、さらにはそこから新たなコミュニティへ再移行する中で、人々が絆を失い、孤立化や閉じこもりを引き起こし、孤独死や自殺も多く出現したという実態が報告されている。こうした反省を踏まえ、仮設住宅への入居やさらには本格的なまちづくりにおいては、コミュニティづくりに視点を当てて、被災地域の復興を進めていく必要がある。
 
現時点での仮設住宅への入居においては、被災者の住区を配慮し、できる限りなじみの関係が維持できる形での入居を進めなければならない。同時に、今後の新たなまちづくりにおいても、そうした住民間の今までのつながりが維持していけるコミュニティの再生を念頭に置くことが基本である。こうしたまちづくりを進めていくうえで、介護保険制度を超えた、生活圏域を基礎にした全ての住民を対象とした地域包括ケアの推進を提案したい。
 
介護保険制度では、高齢者に対象を限定したものであるが、地域包括支援センターは生活圏域を範囲として、すべての住民を対象にして総合相談を実施していく。また、このセンターの最も重要な機能として、生活圏域の基盤づくりとして、圏域内の団体・組織のネットワークづくりを進めていく。
 
この生活圏域に配置されている地域包括支援センターが中核機能を果たすことで、被災地での地域包括ケアの仕組みを組み立てていくことができる。ここでは、高齢者だけではなく、障がい者や児童、さらには失業者等のあらゆる生活問題を有している人々のワンストップサービス拠点として地域包括支援センターを位置付けていく。また、高齢者や障がい者に限定した地域のフォーマルやインフォーマルな団体・組織のネットワークづくりに留まらず、住民に関係する多様な組織・団体を広く取り込んだものにしていく必要がある。
 
以上のような機能強化した地域包括支援センターを生活圏域ごとの仮設住宅に配置することで、地域住民の生活基盤を持続・発展させながら、個々の住民の生活問題に対応していくことを提案したい。さらに、今後の本格的な復興での新たなまちづくりにおいても、この地域包括支援センターは中学校区を、可能であれば小学校区を基礎とする生活圏域での地域包括ケアを継続的に推進していくことを提案する。
 
こうした仕組みを創りあげるためには、地域包括支援センターの人員の強化が求められる。現在は高齢者を対象としているため、介護保険財源をもとに、保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員の3人の専門職を基本にしているが、新たな人員配置が必要不可欠である。この新たな人員の財源については、災害救助法の準用でもって対応していくことを検討すべきである。さらには、地域包括ケアの構造改革特別区域として被災地市町村を指定していくといった工夫も一考に値する。
 
さらに、被災地域では、地域の団体・組織の機能が弱体化している現状がある。インフォーマルなものとしては自治会、民生委員協議会、また各ライフサイクルによる組織、またNPO団体があり、フォーマルなものとしては、介護保険事業者等の組織や職能団体があるが、これらの組織・団体を活性化することも地域包括支援センターの業務であり、そうした活動を推進していく人材の確保が必要である。
 
以上のような観点から、自治体の復興計画には小学校区や中学校区を単位とする生活圏域を核にして、住民全体を包含した支援が盛られるべきである。同時に、生活圏域を中心にして、被災地住民への相談や支援が継続的に展開され、地域の団体・組織の強固なネットワークづくりが進められることを計画に含めるべきである。
 
公益財団法人「さわやか福祉財団」(代表:堀田力)では、東日本大震災 被災地復興に向けて「地域包括ケアの町」の提言(http://www.sawayakazaidan.or.jp/chiiki_houkatsu_care/teigen.html)を出し、賛同者を募っている。こうした市民活動を介して、地域包括ケアを推進していくことも重要であり、多くの賛同者を得て、その盛りあがりを期待したい。
 
次回からは、地域包括ケアを構成するとされる5つのサービス(介護、医療、住宅、介護予防、生活支援)を含めた、地域包括ケアを支えるセルフケア・インフォーマルケア・フォーマルケアについて検討していきたい。

しらさわ・まさかず プロフィール
桜美林大学大学院老年学研究科教授。社会学博士。 1949年三重県名名張市生まれ。74年大阪市立大学大学院修士課程修了。94年大阪市立大学生活科学部人間福祉学科教授を経 て、現職。日本学術会議会員、日本在宅ケア学会理事長、日本社会福祉学会会長。 近著に『「介護保険制度」のあるべき姿』(筒井書房)2011年、「キーワードでたどる福祉の30年」(中央法規出版)2011年。 日本で最初にケアマネジメントに関する論文や著書を書き、日本の土壌でのケアマネジメントを提唱。最近では、ストレングスに 視点を当てたケアマネジメントの方法についての研究を焦点にしている。