ケアのTomorrow Life

第7回「地域包括ケアの担い手─セルフケアの開発方法─」

[ 高齢者住宅新聞 12月5日号 ]

白澤 政和 氏 | 桜美林大学大学院老年学研究科 教授

地域包括ケアを推進するのは、セルフケア、インフォーマルケア、フォーマルケアである。これは、自助、互助、公助とも置き換えられる。

潜在的な能力・意欲活用

これらの内で、セルフケアなり自助が地域包括ケアの基盤であり、それらを補うものとしてインフォーマルケアやフォーマルケアがある。そのため、セルフケアを支援できる仕組みを地域包括ケアの中核にしっかりと根付かせていく必要がある。
 
セルフケアは利用者自らがもっている潜在的な能力が発揮できることであり、そのためには、利用者の意欲や嗜好を活用した支援が不可欠になる。これを進めるのは個人に対しては介護支援専門員であり、利用者や住民のセルフケアを引き出す組織・団体、さらには地域社会を育成するのは地域包括支援センター職員の役割である。
 
個々の要介護者や家族介護者が有している潜在的な能力や意欲を発揮できるよう支援していくのには、介護支援専門員の役割である。これについては、利用者の能力、意欲、嗜好、自信等であるストレングスを把握し、それらをケアプランに反映させていく視点が不可欠である。
 
これは、介護支援専門員が図のような支援をすることである。図に示すように、介護支援専門員は利用者のニーズに合わせて、単に介護保険のサービスを始めとするフォーマルケアやボランティアといったインフォーマルケアと結びつけるだけでは十分でない。利用者のセルフケアである潜在的能力を引き出したり、利用者の意欲や嗜好を反映させるために、ケアプランにフォーマルケアやインフォーマルケアを活用することである。
 
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このためには、介護支援専門員は、いずれの利用者も能力、意欲、嗜好、自信、抱負等のストレングスを有しているとする価値観をもっていることが前提となる。これこそが、利用者の尊厳の保持を具体化するものである。さらに、そうしたストレングスをアセスメントデータとしてつかみ、ケアプランに反映する支援をしていくことを身に着けることが不可欠である。(拙者編著『ストレングスモデルのケアプラン』ミネルヴァ書房、2209年参照)
 
これは、地域包括ケアの一角を介護支援専門員が担うことを示すものである。そのため、介護支援専門員のレベルを高めることが、地域包括ケアを推進する上での課題である。
 
一方、利用者や住民のセルフケアを高めていけるように組織・団体を形成していくことも必要である。これらの組織としては、要介護者や認知症の人の家族の団体、老人クラブ、さらには自治会、ボランティア団体等が相当する。こうした組織・団体が育成され、利用者や地域の人々が参加できるよう組織・団体の強化を図っていくことである。結果として、利用者が組織・団体から啓発されたり、教育を受けたり、社会的に参加できたいといったことが図られることになる。他方、地域の人々の主体的な活動が進められることになる。結果的に、こうした組織・団体の育成業務は、地域包括支援センターや時には社会福祉協議会の仕事となる。具体的な仕事としては、要介護高齢者の家族会を育成し、要介護者や介護家族のセルフケアを育んでいけるような機能を高めていくことである。また、健康な高齢者の参加の下で、介護予防としてのラジオ体操や太極拳のグループを育成し、健康高齢者のセルフケアを高めたり、維持していくよう地域支援計画を作成・実施していくことも仕事のひとつである。
 
こうした地域の団体や組織を育成して行く場合も、それぞれの生活圏域や団体・組織がもっているストレングスを活用することが有効である。具体的には、積極的に活動している地域の団体や組織、さらには団体の中でリーダー的役割を果たしている人材を見つけ出し、活用することである。その結果それぞれの地域や団体・組織のもっている潜在的な能力や意欲を活用でき、地域の特性に合った地域づくりができることになる。
 
最終的には、地域包括ケアは、介護支援専門員や地域包括支援センター職員の支援でもって、地域住民が主体となった活動をめざすことになる。これが実現できれば、強固な地域包括ケアが実現することになる。

しらさわ・まさかず プロフィール
桜美林大学大学院老年学研究科教授。社会学博士。 1949年三重県名名張市生まれ。74年大阪市立大学大学院修士課程修了。94年大阪市立大学生活科学部人間福祉学科教授を経 て、現職。日本学術会議会員、日本在宅ケア学会理事長、日本社会福祉学会会長。 近著に『「介護保険制度」のあるべき姿』(筒井書房)2011年、「キーワードでたどる福祉の30年」(中央法規出版)2011年。 日本で最初にケアマネジメントに関する論文や著書を書き、日本の土壌でのケアマネジメントを提唱。最近では、ストレングスに 視点を当てたケアマネジメントの方法についての研究を焦点にしている。