第10回「定期巡回・随時対応訪問介護看護サービス創設の不思議」

第10回「定期巡回・随時対応訪問介護看護サービス創設の不思議」

[ 高齢者住宅新聞 1月25日号 ]

白澤 政和 氏 | 桜美林大学大学院老年学研究科 教授

多様な居宅サービスが創られることは、在宅の利用者には選択肢が増えるメリットがある。さらには、ナースコールで連絡すれば、いつでも対応してくれるとすれば、利用者にとっては願ってもないことである。これが定期巡回・随時対応訪問介護看護サービスである。このサービスが機能すれば、多くの重度の要介護者のひとり暮らしを支えることが期待でき、地域包括ケアも大きく前進することができるであろう。

このサービスが今回の介護保険法改正の目玉であることには間違いがない。ただ、時間が経つにつれ、実現性の薄いものになってきたように思えてならない。ある意味、設置要件を厳しくし、多様な事業者の参入を閉ざす方向に進んでいる。

このサービスが広く日本全土に普及していく上で基本的な課題がある。都市部やサービス付き高齢者住宅(高齢者専用賃貸住宅等)では実施可能であろうが、農村部では1軒1軒回るには効率が悪く、普及しにくく、それをいかに克服するのかが課題である。また、認知症の人には向かないサービスでもある。ひとり暮らしの場合にはナースコールを使いづらく、1回当たり15~20分とされる時間内で業務を終えることは多くの認知症の人には難しいと思われる。

さらに、このサービスへの参入を最も難しくしたのは、9月22日の介護給付費分科会では必要な数として検討事項になっていた看護職の要件が、11月24日の分科会で常勤換算で2・5名以上が提案され、ほとんど議論されることなく、決まってしまった感がする。確かに重度者を地域社会で支えていく以上、訪問看護が重要であることは理解できるが、これがサービスの提供に必要な人数なのだろうか。看護職をこのように配置できるのは、現状の訪問看護事業者とコラボで実施する事業者か、訪問介護事業者自らがこのサービスを実施するか、あるいは医療機関で余力のある看護職を地域に向けられる場合しか参入が可能でなくなってきた。この設置要件を導入したことで、手を挙げる事業者が激減したことは間違いない。

さらに気になるのは、常勤換算で2・5名の看護職を新規に配置しても、利用者の多くのニーズは介護職に向き、配置された看護職には仕事が量的にはさほど多くないであろうことである。そのため、既存の訪問看護事業者がこのサービスを実施するか、あるいは既存の訪問看護事業者とのコラボで事業を進める以外では、経営的に厳しくなることが予想される。そのため、新たに2・5名以上の看護師でもってこのサービスを実施する場合には、相当広い地域を担当し、看護ニーズ利用者を拡げるしか方法がないであろう。

当初は介護報酬額がどの程度になるかで、手を挙げる事業者の数が決まると思っていたが、その前に折れてしまった感がする。訪問看護事業者との関係なしには、このサービスを実施することが不可能な状況になっているからである。このサービスは、介護職が主役で、看護職が脇役であると思っていたが、いつの間にか看護職が主役になってしまっていた。なぜ、このように変節したのか不思議でならない。

同時に、このサービスはサービス付き高齢者住宅にも導入されることになっているが、その場合も地域で実施するのと同じ要介護度別の介護報酬単価にすることになった。これについては介護給付費分科会でも議論されていたが、住宅内と地域では、巡回にかかる時間が大きく異なるため、当初は介護報酬額を減額するとの意見もあったが、サービス付き高齢者住宅でこのサービスを促進させるために、同じ報酬にするとのことであった。

これも不思議な話のように思える。医療保険では、サービス付き高齢者住宅や特養に訪問診療に行く場合には、診療に回る時間が少なくすむため、訪問診療料は低く設定されている。この論理でいくと、サービス付き高齢者住宅の場合には介護報酬単価は低く設定されてもしかるべきではないかと思うが、いかがであろうか。

これらを総括すると、このサービスは生活圏域といった地域でよりも、サービス付き高齢者住宅で進めていくことを狙っているように思えてならない。報酬単価が決定すれば、その本質が明かになるであろう。第2の特定施設化を狙っているようにも思えるからである。

しらさわ・まさかず プロフィール
桜美林大学大学院老年学研究科教授。社会学博士。