第14回 地域包括支援センターでの「地域ケア会議」  課題の解決へ向け多職種が協働を

第14回 地域包括支援センターでの「地域ケア会議」 課題の解決へ向け多職種が協働を

[ 高齢者住宅新聞 3月25日号 ]

白澤 政和 氏 | 桜美林大学大学院老年学研究科 教授

地域包括ケアを推進する基盤は、地域包括支援センターが「地域ケア会議」を実施することで、多職種協働を推進していくことにある。これについて、平成24年度予算案に、地域包括ケアシステムを構築するために、地域包括支援センターの地域ケア会議等を推進する「地域ケア多職種協働推進事業」として7・7億円が新規に計上されている。厚生労働省の「地域ケア会議」に対する取組みの意気込みが分かる。

この地域ケア会議とは、①地域にある高齢者支援に関わる団体や機関の代表者による会議、②多職種の専門職が参加する困難事例の検討会議であり、これら2つの会議は地域包括支援センターが主催して実施することになっている。前者の会議は、地域の機関・団体のネットワークづくりを進めることであり、これによって生活圏域での地域包括ケアの土台を確立することにある。具体的には、生活圏域のニーズをもとにして、地域の機関や団体間での連携を強化し、社会資源の改善や開発を図っていくことである。後者はケアマネジャーが困っている事例について多職種の実務者が参加して検討を行い、検討した事例を生活圏域で支えられるよう支援していくと同時に、ケアマネジャーに対して教育的な支援をしていくことである。
 
こうした内容は、使う言葉は違うが、古くからその重要性が言われ、実施されてきた。25年前の1987年には当時の厚生省が作った高齢者サービス調整チーム実施要綱に基づき、各市区町村は高齢者サービス調整チームとして、代表者会議と実務者会議を作り、運営してきた。こうした類の調整会議は作られては消え、また別のセクションが同じようなことを繰り返し実施し、また消えていくという運命を辿っている。
 
今回の「地域ケア会議は」、ブランチ等を含めれば、7000ヶ所近い拠点がある地域包括支援センターをもとにして、生活圏域での調整会議を推進していく提案である。是非とも、成功させなければならない。
 
このような調整機能を果たす両方の会議が重要なことは誰もが良く分かっている。重要なことは、これらの会議を介して生み出すアウトプットである。2つの会議を実施することで何を生み出すのかである。
 
私自身も古く1988年に地域の仕組みづくりとして、図のような提案をある論文でした(「要援護老人を支えるネットワーク作り─社会福祉の観点から」白澤政和、『老年社会科学』第10巻1号、pp・30~41、1988年)。この図では、ケアマネジメントを介して事例検討会を実施し、そのアウトプットとして、ケアマネジャーを支援するだけでなく、利用者を個別的に弁護(ケース・アドボケート)し、地域の社会資源を変えていくことを示した。他方、地域の団体や機関をネットワークし、機関・団体の代表者による会議(ケース・コミッティ)を実施し、そのアウトプットとして、当該地域の課題(ニーズ)をもとに、地域の社会資源を新たに作ったり、変えていくこと(クラス・アドボケート)を提案した。
 
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この2つの会議は連続している。例えば、当該地域で虐待を受けた事例が実務者の会議で検討され、その事例の問題解決が図られる。それを代表者会議に引き継ぎ、当該地域での虐待の状況について地域のアセスメントをし、地域での高齢者虐待に関するニーズをもとに、代表者の団体や組織が協力し合い、虐待の予防や解決に向けた活動を実施することになる。
 
この図を現状で説明すれば、左側のケアマネジメントは居宅介護支援事業者が担い、右側の機関・団体の組織化は地域包括支援センターが担うことになる。また、事例検討会と代表者会議は地域包括支援センターが主催することになる。
 
昔に作成したこの図を改めてみると、25年前には左側のケアマネジメントもほとんどなされていなかった時代であったが、よくここまで育ったものである。一方、右側の地域の機関や団体の組織化については、厳しい言い方をすれば実績の積み上げが弱く、空白の25年であった。地域の団体や機関を組織化し、代表者会議で地域のネットワークづくりを進めていくことは、まさに第3回で述べた地域支援計画を作成し、実施していくことである。そのため、代表者会議は、地域包括支援センターに既に設置されている地域の団体や機関の代表者で組織されている運営協議会が当たることで可能となる。
 
現状の実務者による事例検討会や代表者による会議は必ずしも十分に機能していない。それについては、過去にこれらの類の会議がうまく機能しなかった理由を明らかにし、進めていく必要がある。これらの会議の重要性については地域包括支援センターの職員であれば、誰もが理解している。十分に機能していない理由は、具体的にどのような方法でやれば機能するのかが分からないからである。
 
特に、後者の代表者による会議についてはそうであり、これは地域のネットワークづくりに相当する部分である。これは単に代表者が集めれば良いということではなく、そこから、生活圏域のニーズを明らかにし、地域の団体・機関間で実施していく地域支援計画を作成・実施することで、解決を図っていくことである。会議からのアウトプットが重要であり、具体的に地域の機関や団体が地域のニーズを充足するために相互に活動し合うことで、地域のネットワークが作られていくことになる。これについては、既に第3回において、地域支援計画の具体的な作成方法を説明しているが、基本は介護支援専門員のケアプランと同じであり、捉えるニーズが個人か地域かが違うだけである。同時に、今まではイベント的な一過性の活動が多く、代表者会議で欠落していることは、地域ニーズに基づき、計画的に地域を変えていく視点(planed change)である。
 
実務者の会議も、困難事例の人のニーズを再検討し、問題解決を図っていくことである。ここでも、基本はアセスメント、ケアプラン作成、ケアプラン実施、モニタリングのPDCAサイクルをもとに再検討することである。これをもとに、アウトプットとして困難となっている課題の解決が図られることである。 
 
そのため、地域包括支援センターが地域ケア会議を進めていくためには、両方の会議とも、個人や地域のニーズを明らかにし、それらをもとにPDCAサイクルで、計画を作成・実施していくことを検討することである。検討して明らかになったことを地域包括支援センターが会議への参加者と一緒に実施していくことである。それこそが、地域包括ケアの基盤となるものである。

しらさわ・まさかず プロフィール
桜美林大学大学院老年学研究科教授。社会学博士。