第16回 地域包括ケアで認知症の人をいかに支えるか①─BPSDへの対応  支援者側の「気づき」高める研修必要

第16回 地域包括ケアで認知症の人をいかに支えるか①─BPSDへの対応 支援者側の「気づき」高める研修必要

[ 高齢者住宅新聞 4月25日号 ]

白澤 政和 氏 | 桜美林大学大学院老年学研究科 教授

要介護高齢者の半数を認知症の人が占めることもあり、今回の介護報酬改定の基本的視点の1つが「認知症にふさわしいサービスの提供」であった。しかしながら、認知症の人に対する有効な新規サービスは見当たらない。今回の改正の目玉サービスである「定期巡回随時対応訪問介護看護サービス」も、認知症の人には不向きなサービスである。

今回の報酬改定では認知症の人に焦点を当てたものとしては、介護保険施設入所に際し、徘徊や暴力・暴言等のBPSD(認知症の行動・心理症状)があると医師が診断した場合、7日間に限り1日200単位が加算されることになった。これは、認知症の人の施設入所が容易となるよう施設側にインセンティブを働かせることを意図したものであるが、逆に、BPSDがあれば、1週間は少し多めの自己負担を強いられることにもなる。その意味では、必ずしも認知症の人のケアを促進するものとは言い切れない側面がある。
 
介護保険制度そのものが基本的に認知症の人には不利な制度になっている。要介護認定制度ひとつとっても、例えば、認知症の人の場合は「買物ができる」から介護が必要になる。BPSDがあれば、家族の介護負担は極めて過重になるとの調査結果があるにもかかわらず、現状では認知症の人の要介護度は高くならない。その意味では、介護保険制度を根本から見直さなければならない。それは、介護保険制度を寝たきりバージョンから認知症バージョンに切り替えることである。
 
さらに、「認知症にふさわしいサービスの提供」をするには、認知症の人に対して新規のサービスを作るよりも、認知症の人へのケアで重要な役割を果たす人材の資質を高める発想が大切である。特に在宅ケアでは、一方でケアマネジャーと介護職員、他方で地域包括支援センター職員の認知症の人への対応が鍵であり、人材養成が基本である。
 
ケアマネジャーや介護職員については、認知症の人のBPSDへの対応について、もっと積極的な役割を果たすべきである。BPSDは、徘徊、暴力・暴言、介護への拒否、鬱症状等であり、認知症の人の6割から8割がある時期に呈するとされる。BPSDを呈すると、家族はそれへの対処に困り、介護者の心身の介護負担が極端に大きくなり、施設入所を検討する契機にもなっている。そのため、利用者やその家族の最も身近にいるケアマネジャーがBPSDへの対応方法について、家族やサービス事業者と一緒に検討し、対応方法をケアプランに反映させていくことが重要である。結果として、BPSDを時には解消したり、解消できないとしても、家族やサービス事業者がうまく対応できるケアプランを作成していくことである。
 
国際老年精神医学会は、BPSDの背景には、身体生理的、心理的、社会的な要因があるとしている。また、ある論者は徘徊などのいくつかのBPSDは、利用者のニーズが変形して生じるものとしている。ケアマネジャーはこうした視点に立ち、家族、居宅サービス事業者、医師等とのカンファレンスを行い、どのような背景や思いでBPSDが生じているかについて、さらにはどのようにすれば「うまく対応できるか」といったことについて話し合い、その結果をケアプランに反映させていく責任がある。これには、事例研究を中心にした、利用者のアセスメントでの支援者側の「気づき」を高めていく研修が必要である。
 
一方、そうした対応では解決ができず、自傷他害のおそれなどがあり、医師の処置が必要な場合には、医師と投薬後の状態について頻繁な連絡を取り合い、適切な投薬ができるよう密接な連携を保つことも重要である。
 
結果として、家族や居宅サービス事業者が利用者のBPSDに適切に対応できたり、専門医との連携でBPSDが少なくなったりするよう、ケアマネジャーやサービス事業者の力量を高めていくべきである。
 
他方、認知症の人を地域の中で支えていくうえで、地域包括支援センターの役割が大きい。認知症の人を地域で支えていくためには、様々な課題がある。ひとり暮らしの認知症の人であれば、火事が怖いので、施設入所を地域の人々から求められることもある。徘徊のある高齢者が行方不明になることもある。こうした問題を解決して、地域で認知症の人を支える土台を作るのが、地域包括支援センターの仕事である。
 
これには、地域ケア会議での実務者会議において、そうした高齢者の在宅生活の可能性を検討したり、地域の機関や団体の代表者からなる運営協議会で認知症の人が安心して住めるまちづくりを検討し、様々な機関や団体が参加して、実施していくことである。
 
このように、ケアマネジャーやサービス事業者、さらには地域包括支援センター職員の認知症の人への適切な対応ができるようしていくことで、認知症の人を含めた地域包括ケアが推進されることになる。

しらさわ・まさかず プロフィール
桜美林大学大学院老年学研究科教授。社会学博士。