第18回  介護老人福祉施設は地域包括ケアに含まれるのか 重度者・認知症者の受け皿として必要 

第18回 介護老人福祉施設は地域包括ケアに含まれるのか 重度者・認知症者の受け皿として必要 

[ 高齢者住宅新聞 5月25日号 ]

白澤 政和 氏 | 桜美林大学大学院老年学研究科 教授

地域包括ケアに介護老人福祉施設は内包されるのであろうか。
介護老人福祉施設が住宅に移行していく提案がなされているが、これは決して介護老人福祉施設がなくなっていくことを意味するものではない。住宅への移行とは、介護老人福祉施設の中で、ハード面だけでなく介護などのソフト面を含めて、住宅的な要素をできる限り取り入れていこうとするものである。

それが政策的には、ユニット型の介護老人福祉施設に移行していくことである。ただし、このユニットケアは単に一人部屋と共同スペースといったハード面で整備をしていくことだけでなく、個々の高齢者のニーズに合わせた個別ケアを推進していくことであるが、得てしてハード面に議論が集中しているきらいがある。
 
現実的にも、重度のひとり暮らしの高齢者が最期まで在宅で生活できることには無理がある。同時に、高齢者独居世帯が2005年の386万世帯から、2025年の673万世帯にまで急増していくことを考えると、介護老人福祉施設は、有料老人ホーム等との競争は存在するとしても、一層重要性を増してくるであろう。同時に、そのことは、介護老人福祉施設は地域包括ケアを進めていく底支えの機能を担っていくことになる。
 
スウェ―デンやデンマークでは、施設が住宅に移行していったことがよく例に出されるが、こうした国々でも、施設内に介護職の人々が配置している入居者割合は、日本と比べて遜色がない。
 
日本と海外の高齢者施設・住宅の入居者割合を比較すると、日本は高齢者に占める介護保険施設とグループホームを合わせた割合が3・4%である。それに比べて、スウェーデンは、「特別な住宅」という総称で、ナーシングホームやグループホームが、高齢者住宅と一体化されているため、正確な統計がとれず、スウェーデン政府からの聴き取りであるが、4・2%である。また、デンマークは 介護老人福祉施設に相当するプライエムが2・5%、英国のナーシングホームと老人ホームを合わせたケアホームが3・7%である。また、介護者が配置されているのが医療サービスとしてのナーシングホームのみであるアメリカでは、ナーシングホーム入所者比率は4・0%である。
 
日本の介護老人福祉施設を含めた、介護職が配置され、24時間ケアがなされている施設入所者割合が突出して高いわけではない。問題は、介護保険施設間での入居者比率のバランスについては大いに議論されなければならない。同時に、住宅サービスとされるサービス付き高齢者住宅はどの程度まで在宅生活を支え切れるのかの基準が求められる。
 
また、住宅的な要素が含まれてくることで、介護老人福祉施設は、在宅と同様に、ターミナルケアである看取りを推進していくことが一層求められてくる。同時に介護老人福祉施が地域包括ケアの底支えを一層推進していくためには、地域の中での利用施設といった位置づけを確立していき、「終いの住処」といった機能だけでなく、短期利用や中期利用の活用方法を探っていく必要がある。
 
また、認知症の人との関係では、精神病院に認知症患者が5・2万人程度入院しているが、平均在院期間が944・3日と他の入院患者と比べても長期化の傾向にあるといわれている。そのため、退院時期の目標値を2か月にするといった議論が「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」でなされている。ただ、退院していく認知症の人はどこが受け皿になるのかが課題である。現実に、自宅にすべてが戻れるわけがない。グループホームは一般的に中程度の認知症の人を支えていることを考えると、その受け皿となれる中心は介護老人福祉施設であろう。
 
また、今回の介護報酬改定で、認知症でBPSDがある人については、「認知症行動・心理症状緊急対応加算」がついたが、認知症の人で在宅生活が到底困難になっている場合に、介護老人福祉施設はスムーズに入所できる仕組みを整えていくことが求められる。こうしたことで、介護老人福祉施設は地域包括ケアでの底支えとしての役割を担っていくことができる。
 
なお、介護老人保健施設は社会復帰施設である以上、その機能を果たすことができれば、地域包括ケアで重要な役割を果たすことが可能である。
 
一方、介護療養型医療施設は、現状では廃止の方向にあり凍結状況にあるが、自宅療養が無理な重度の医療ニーズがあり、長期療養が必要な現在の利用者について、他の施設や病院で受け入れ可能かどうかの議論が必要である。いずれにしても、介護療養型医療施設に入院している人々がいずれかの施設や病院に入所・院できてこそ、地域包括ケアが成り立つことになる。

しらさわ・まさかず プロフィール
桜美林大学大学院老年学研究科教授。社会学博士。