第19回  地域包括ケアでの病院の位置づけ 病院医療と地域医療の線引きが課題

第19回 地域包括ケアでの病院の位置づけ 病院医療と地域医療の線引きが課題

[ 高齢者住宅新聞 6月5日号 ]

白澤 政和 氏 | 桜美林大学大学院老年学研究科 教授

病院は入院と退院を接点にして地域とつながっている以上、地域包括ケアの入り口でもあり、出口でもある。入院時には、在宅での利用者の医療や生活情報を円滑に提供していく必要がある。同時に、退院時には、患者の入院中の医療情報を地域包括ケアを担う在宅医や居宅介護事業者に提供できる仕組みが必要である。これが、医療の領域では病診連携であり、他方、医療保険と介護保険を連動させることでは、医療・介護の連携である。これでもって、在院日数を短縮し、退院の促進を図っていこうとするものである。

今回の介護報酬改定では、居宅介護支援事業者での入院加算や退院加算の内容が変更になった。入院に際して、介護支援専門員の病院への利用者情報の提供に対して、病院を訪問しての場合は200単位、訪問以外の場合には100単位が加算されることになった。退院について介護支援専門員が、病院の医師等からの要請により退院に向けた調整を行うための面談に参加し、必要な情報を得た場合に、1回につき300単位で、入院中3回〈その内の1回は、入院中の担当医等との会議(カンファレンス)に参加していることが条件〉まで加算を得られることになった。
 
一方、同時改定であった診療報酬では、新規に退院調整加算1と2が作られた。これは退院困難な要因を有する患者を抽出する体制を整備し、その上で入院後7日以内に退院支援計画の作成に着手していることが要件である。さらに、できる限り早期に患者や家族と退院後の生活について話し合い、関係職種と連携して退院支援計画を作成し、計画に基づき、退院・転院後の療養を担う保険医療機関等との連絡調整や適切な介護サービスの導入に係る業務等の退院調整を行っていることに対して加算されるものである。
 
退院調整加算1は、一般病棟であり、14日以内の退院で340点である。退院調整加算2は、療養病棟等であり、30日以内の退院で800点とし、社会的入院につながりやすく、入院期間が長期化傾向を示す療養病棟で高い配点をし、早期退院を促している。
 
また、認知症などの精神療養病棟入院料退院調整加算が創設され、退院支援計画を作成し、退院支援を行った場合に、500点が加算される。
 
同時に、認知症患者については、入院日数に応じた評価体系に見直し、短期集中的な認知症治療を評価している。具体的には、認知症治療病棟入院料が30日以内や、30日以上60日以内の場合には高くし、61日以上の場合には低くしている。
 
さらに、病診連携を促進するために、新たに「地域連携計画加算」ができ、300点がついた。これは入院時の症状、標準的な入院期間、退院後に必要とされる診療等の在宅での療養に必要な事項を記載した退院支援計画を作成し、患者に説明し、文書により提供すると同時に、当該患者の治療を担う別の保険医療機関と共有した場合に評価を行うものである。病診連携で、在宅療養への早期移行、地域生活への復帰に向けての取り組みの一環である。
 
病院と地域との関係では、上記のような連携方法についての議論が一方で重要であるが、退院時での加算が多くみられるように、病院からの退院を促進することにポイントが置かれている。そのため、病院での在院日数を含めて、病院医療と地域医療の分担の線引きが重要な課題である。同時に、退院者が生活できる受け皿づくりも重要である。
 
今回の「税と社会保障の一体改革」の構想では、現在の在院日数19~20日を、2025年には「高度急性期」は15~16日程度、「一般急性期」は9日程度に短縮していくことを計画している。財源的には、入院期間の短縮により、4300億円の削減が図られるとしている。
 
これについては、退院してくる患者を受け入れる地域での医療や介護が整っているのかという課題がある。同時に、入院治療が必要であるにもかかわらず、退院を余儀なくされると、再度入院を繰り返すことになり、却って効率の悪いものになりかねない。そのため、在宅医療を含めた地域ケアの水準を確保しながら、入院期間の短縮を図っていかなければならない。
 
以上述べてきたように、地域包括ケアを推進していく組織・人材として、病院や医師が重要な位置づけになる。そのため、地域包括支援センターが組織する団体として、地域の医師会だけでなく、病院等の参画も不可欠である。そうした時に、初めて医療と介護が連携した地域包括ケアが出来上がることになる。

しらさわ・まさかず プロフィール
桜美林大学大学院老年学研究科教授。社会学博士。