第20回<最終回>  サービスの充実で介護保険制度の維持へ 地域包括ケアの行方

第20回<最終回> サービスの充実で介護保険制度の維持へ 地域包括ケアの行方

[ 高齢者住宅新聞 6月25日号 ]

白澤 政和 氏 | 桜美林大学大学院老年学研究科 教授

地域包括ケアを今後進めていくうえでの課題を整理することで、「地域包括ケアとは何か」の最終回を締めくくりたい。
まずは、地域包括ケアと類似の事業が行われてきたが、日の目を見なかったことの反省から始めることが大事である。実際に、昭和62年には市町村をベースにした高齢者サービス調整チームや保健所を中心とした保健所保健・福祉サービス調整推進会議が同時に試みられた。これからの事業が必ずしもうまくいかなかったことの反省を踏まえて、以下の6点について学ばなければならない。

①国は局間を超えて、一体的に地域のネットワークづくりを推進すること
厚生労働省には地域社会での調整機能を担う担当局・課がないが、局間の利害を超えて、厚生労働省全体で一体となり、地域包括ケアを推進していくことが大切である。
 
②個々の生活圏域での地域包括ケアの成果について自由度を与えること
個々の生活圏域では地域ニーズも異なれば、活用できる地域の社会資源も異なる。そのため、個々の地域包括支援センターでの取り組みに対して自由度をもって国も自治体も支援していく。
 
③地域包括支援センターの職員の資質を向上させること
地域包括ケアの推進はひとえに地域包括支援センター職員の資質に委ねられることになる。そのため、職員はセンターの信頼を地域の人々から得て、地域ニーズに着目した支援計画を作成・実行していける多様な能力を高めていく必要がある。
 
④地域包括支援センターの業務を整理すること
現状の地域包括支援センターには多様な業務が課せられており、効果・効率の観点から、不要な事業を整理していく必要がある。具体的には、要支援者のケアマネジメントはケアマネジャーに委託し、二次予防事業者への支援は、広く健康な全ての地域の高齢者を対象とした介護予防業務へと転換を図っていく。
 
⑤地域包括支援センターと介護支援専門員が車の両輪で地域包括ケアを進めていくこと
地域包括ケアは地域包括支援センターと介護支援専門員の連携で進められるものであり、介護支援専門員の資質の向上も不可欠である。
 
⑥地域包括ケアの内容を可視化するよう努力すること
地域包括ケアの成果は見えにくいものであり、地域包括支援センターではPDCAサイクルで行う地域ニーズに対する計画作成・実施の内容を分かりやすく公表していくことで可視化し、地域社会から信任を得ていかなければならない。
 
以上のようなことが推進できれば、地域包括ケアの「器」は確立していくことになると確信している。
 
次に、地域包括ケアの仕組みが確立したとしても、その器に盛られる介護や医療のサービスの質が高く、メニューが揃っていることが不可欠となる。ある意味、最低限のサービスメニューが整ってきたからこそ、地域包括ケアの器づくりの議論が始まったといえる。
 
器に盛られるべきサービスへの期待は、社会保障と税の一体改革法案の中から将来像が浮かび上がってくる。消費税が2015年度に10%になった時に、どの程度の介護や医療のサービスが準備されるかについての議論が重要であり、その時期まで介護や医療の保険制度が持続するだけでなく、よりサービスが充実していることが望まれる。
 
今回の一体改革により、2025年には、図のような生活圏域での地域包括ケアシステムになるとイメージ図が示されている。ここでは、介護人材が確保され、24時間対応の訪問サービス、グループホーム、小規模多機能型サービスが充実するとしている。消費税が介護保険財源に注入される以上、この図に示されたサービスが全てではないが、器に入れるより魅力あるサービスを量的・質的に増やしていくことを推進していかなければならない。
 
ただし一方で、厚生労働省は社会保障費用の将来推計で、この改革実施後の2025年度には、介護保険料が8200円になると試算している。高齢者にとっては、消費税が5%上がった上に、保険料が現状よりも1カ月3200円程度アップすることは、低所得者には軽減策がとられるとしても、介護保険制度は国民から賛同が得られるであろうか。
 
このような状況を考えると、介護保険に回す消費税を厚くするしか方法がない。5月29日の自民党の社会保障制度に関する特命委員会と厚生労働部会の合同会議で、社会保障と税の一体改革関連法案の対案となる「社会保障制度改革基本法案」(仮称)の骨子が承認されている。ここでの介護保険制度の位置づけは「国及び地方公共団体の負担割合の引上げ等の必要な措置を講ずる」とする公費負担率のアップを提案している。この結果保険料を相当程度抑えることができれば、介護保険制度を維持していく道が開かれるように思える。さもなければ、10%に消費税をアップすることに対して、高齢者からの理解が得られないのではないだろうか。
 
いずれにしても、財政難の中で、国民の負担増はやむをえないが、効果・効率の視点に立ち、介護保険制度のスクラップ・アンド・ビルドを図っていかなければならない。

しらさわ・まさかず プロフィール
桜美林大学大学院老年学研究科教授。社会学博士。