何でも言える環境が、チーム一体の介護を生み出す

何でも言える環境が、チーム一体の介護を生み出す

甲斐 裕章 氏|湘南乃えんホールディングス株式会社 代表取締役

神奈川県藤沢市、小田原市、平塚市で高齢者向け介護施設を運営する湘南乃えんホールディングス株式会社は、傘下企業3社でグループホームを中心とした小規模な施設を多数展開している。設立から5年あまり。開設初年度を除いて赤字決算だったことがないという経営の秘訣とはなにか。この厳しい社会環境の中で成長するためには何が必要か。同社代表取締役である甲斐裕章氏に話をうかがった。

何でも言える環境が、チーム一体の介護を生み出す
湘南乃えんホールディングス株式会社
2004年に神奈川県で創業。藤沢市大庭の介護施設を運営する株式会社グループホーム研究所、藤沢市宮前の介護施設を運営する株式会社SHONAN CARE、さらに小田原市および平塚市の介護施設を運営する有限会社ヒューマンケアシステムの3社を統括している。きめ細かな介護を目指し、全拠点で小規模なグループホームを中心としたサービスを提供している。

現場の声を十分に汲みとる会議が、成長の秘訣

湘南乃えんグループは、本部である湘南乃えんホールディングス配下に、4つの介護拠点を持つ介護事業グループである。各介護施設は、藤沢市、小田原市、平塚市にあり、小規模なグループホームを中心に、小規模多機能型居宅介護施設のケアホーム、デイサービス、ケアプランの作成などのサービスを提供している。
 
int007_noen_kiji1設立から5年あまりという短期間に、矢継ぎ早に拠点を広げてきた同社だが、このような展開を行ったのには訳がある。甲斐氏は、「規模が小さいと、施設あたりの職員数も少なく、どうしても人間関係が濃密になりすぎてしまいます。そもそも個性が出やすい対人関係の職場であり、関係が悪くなるとそれが原因で辞めてしまう人がでてしまいます。これを変えていくために規模の拡大を図ったという面もあります」と語る。
 
このように急激に規模が拡大する中で、同社の施設は、どの拠点でも順調に利用者が伸びている。グループホームはほぼ満室で、他社が苦戦する小規模多機能型居宅介護施設も、7割方埋まっている。甲斐氏にその秘訣を尋ねると、「いかにチームとして介護をするかを常に考え、それを実践するしくみを作ってきたことが、成果につながっているのかもしれません」と語る。
 
甲斐氏の言う「チームとして介護を実践するしくみ」とは、コミュニケーションを活発にし、現場のスタッフが言いたいことを言える場を作ることだという。そのためにユニット単位、施設全体、各施設の管理者など、さまざまなレベルの会議を多数設けている。
 
一般的に会議というと、上からの連絡が主になりがちだが、同社の会議は違う。同社で作成している職位ごとの目標を記したキャリアシートにも、会議での発言が明記されるほど、参加者は発言を求められ、現場の意見を吸い上げているのだ。「人間は悪い妄想も生むし、恥をかくと思ったら口を閉ざしたりします。それを敢えて確認しあって、はき出させる会議をできるだけ作ろうとしています」(甲斐氏)
 
とはいえ、「当初からこのような会議だったわけではない」と甲斐氏は次のように語っている。「たとえば私が会議の席で、『利用者さんのために、こういう風にやっていこうと言ったとします。しかし、社員には、『社長が言ったから、こうしなきゃいけないと受け止められてしまう。これでは、利用者さんの視点で考え、自主的に動く人材は育たないと思いました。そこで、こちらからの伝達は最小限に止め、スタッフに思っていることを言ってもらうようにしたのです。同時に、具体的なルールなどは現場に委ねています。もちろん大まかな理念などは伝えますが、現場での活動は管理者とチームに任せて、チームでの議決を重要視しています」
 
もうひとつ、当初目指したスケールメリットによって、スタッフが働きやすい環境を生み出し、ひいてはそれがサービスの向上につながっているという面もある。多拠点展開をする事業所では、それぞれの拠点が独立し、あまりお互いに干渉しないというところも多い中、同グループでは相互のコミュニケーションも活発だという。甲斐氏は、「産休など欠員が出ると、他の施設のスタッフが応援に行くこともよくあります。また、他の施設でうまくいっているからうちでもやってみようとか、他もうまくいっていないようだから、このやり方は変えてみようといったことも少なくありません。他の拠点との交流が盛んになることで、考え方の物差しが多面的になり、グループ全体の風通しも良くなっています」と語る。

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