制度が想定していなかったニーズに応え、 いち早く介護対応型マンションを運営

制度が想定していなかったニーズに応え、 いち早く介護対応型マンションを運営

松永安優美氏|医療法人 聖生会 理事長 社会福祉法人 裕母和会 会長 医師

医療法人 聖生会の理事長で、社会福祉法人 裕母和(ゆうもわ)会の会長を務める松永安優美氏は、現役の内科医である。医療現場で悲惨な介護の実態を目の当たりにし、特別養護老人ホーム(特養)の運営に乗り出したのが19年前のこと。施設を運営する中で、現場にはさまざまなニーズがあることを知り、必要に応じて次々と新たな施設を開設。介護対応型マンション 悠楓(ゆうふう)園をはじめ、現在栃木県内で8カ所の施設を運営している。

制度が想定していなかったニーズに応え、 いち早く介護対応型マンションを運営
医療法人 聖生会/社会福祉法人 裕母和(ゆうもわ)会/有限会社 えむ企画
栃木県下都賀郡岩舟町の松永医院を母体に、岩舟町と佐野市で全8カ所の介護関連施設を運営している。そのひとつ介護対応型マンション 悠楓園は、適合高齢者専用賃貸住宅が制度化する10年近く前から、ケア付きの賃貸マンションとしてサービスを提供。年齢、収入、同居制限のない画期的な賃貸住宅として注目を浴びている。

悲惨な介護の現場をなんとかしたい

松永氏が数々の高齢者介護施設を運営することになったのは、実家の病院で医師をしていた頃、多くの悲惨な介護の実態を目の当たりにしたことがきっかけであった。

「往診にうかがった時、異様な臭いがするので何かと思ったら、半身不随で寝たきりの老人が昼間は家人が不在のためおむつを交換してもらえず、便をつかんだ手で家の中を這うことからあたりにこびりついた汚物の臭いでした。この方は意識はしっかりしているので、こちらが血圧を測ろうとして手を伸ばすと、恥ずかしそうに手を引っ込めるのです。今でもその時のことを思い出すと、胸が詰まります。また、このあたりでは長男の嫁が親を見るのは当然という風潮があって、お嫁さんが大変な思いをして介護をしていました。こういった悲惨な状況を少しでも変えるには、施設を作るしかないと思ったのです」と松永氏は語る。

そこで、まだ介護保険もなく国の支援も薄かった1990年、聖生会と裕母和会を設立。翌91年4月にひとつめの施設、特別養護老人ホーム 清松園を開設し、本格的に介護事業に乗り出した。

制度の網から漏れる人びとを救うため、多彩な施設を次々と開設

int009_yufu_kiji1実際に運営を初めてみると、特養の厳しい入所判定が足かせとなっている現状がわかってきたと、松永氏は次のように語る。「公平を期すためには仕方がないとはいえ、財産や収入、家族関係など、立ち入ったことまで調べられるため、それが嫌であきらめるというケースも少なくありませんでした。そこで役所などの公的な入所判定のない施設が必要だと思い、介護老人保健施設 安純(あずみ)の里を立ち上げました」

そして、96年栃木県下都賀郡岩舟町に安純の里を、99年佐野市に介護老人保健施設 さくらの里を、さらに2000年に同じく佐野市に養護老人ホーム 悠生園を開設するなど、次々と施設は増えていった。

しかし、松永氏は、それで満足はしなかった。多くの介護福祉施設を運営するうちに、また新たな課題が見えてきたのである。それは、年齢や同居の制限があることであった。「年齢にかかわらず、障害を持つと生活が立ちゆかなくなってしまいます。しかし、老人介護施設は高齢者しか入居できません。見た目は健康なため要介護認定されないけれど、健康に不安があるという方もいます。また、子どもに障害があるため、働けないという方、健常者でも食事を作る時間がないという方もいます。そういう介護保険ではカバーできないニーズに応えたいと思いました」と、松永氏は設立の動機を語る。

そこで、年齢や収入、同居の制限なく誰でも住める介護対応型マンション 悠楓園を99年に開設。しかし、制限がないことをコンセプトとしたため、医療法人や社会福祉法人では運営できないことがわかり、新たに有限会社 えむ企画を設立した。

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