理念の共有と人材育成が質の高いサービスを生む

理念の共有と人材育成が質の高いサービスを生む

飯田大輔氏|社会福祉法人 福祉楽団 理事・経営管理本部本部長

千葉県香取市と埼玉県八潮市で特別養護老人ホームを中心とした介護サービスを展開する福祉楽団。よいサービスはよい人材から生まれるとの考えから、職員のやる気が高まり、自分の成長が感じられる職場づくりを進め、長期的な視点で人材育成に取り組んでいる。福祉法人としては対事業収入で突出した教育研修費を注ぎ込む福祉楽団が考える人材育成のあり方とは何か――理事で経営管理本部本部長の飯田大輔氏に聞いた。

理念の共有と人材育成が質の高いサービスを生む
社会福祉法人 福祉楽団
2001年12月、千葉県香取市に設立。同所に「杜の家」(特別養護老人ホーム/定員50名、グループホーム/定員18名、ショートステイサービス/定員15名、デイサービスセンター/定員30名)と、埼玉県八潮市に「杜の家やしお」(全室個室の特別養護老人ホーム/定員100名、ショートステイ/定員10名、居宅介護支援センター)を運営する。

根拠を持った介護を実践。そのための知識や技術を職員に求める

「福祉楽団」という法人名は、6年ほど前に職員公募で改名された。利用者や様々な職種の職員が、いろいろな楽器を奏でながら1つのハーモニーを生む「楽団」のような組織でありたいという思いが込められている。多様性から生み出される調和とも換言でき、多様な個性を持つ職員が活躍できる組織づくりを目指している。福祉楽団が目指すそうした組織のあり方を、経営管理本部本部長の飯田氏はサッカーと野球の違いになぞらえる。
 
野球型の組織は、役割(ポジション)が固定されたプロ集団の集まり。選手がそれぞれの役割で高い能力を発揮すれば、組織としての力を高められます。反面、こうした組織は各部署で問題が発生したときに問題の共有が難しく、その部署で解決策が生まれたとしても部分最適になりがちで全体最適にならない傾向があります。また、ゲームの作戦は、監督が細かに指示を出すことができ、またそれに左右されます。一方、サッカー型の組織は、基本的には役割が決まっているものの状況に応じて変化させ、選手が連携することでチーム力を発揮します。そのために選手は常に自分の頭で考えながらプレーをすることが求められ、監督もいったんゲームが始まれば細かな指示を出すことはできません。福祉楽団が目指す組織は基本的にこのサッカー型の組織で、目的の共有を重視しながら個々の職員が常に頭で考えながら行動できること。そのための環境や仕組みづくりが重要です」(飯田氏)。
  
指示されたこと、あるいは利用者に求められたことなど、単に言われた通りに物事をやるのではなく、なぜ、そうしなければいけないのか、そうすることの最善の方法は何か、常に自分で考え、行動できる人材であることを職員に求めている。考えて行動するベースの1つとして、科学的な根拠を持った介護を身につけることが重要だと飯田氏は指摘する。例えば、利用者から「水をください」と言われたら、介護の現場ではその利用者は水を飲んでいいのか、どのような飲み物を、どれだけの量を提供していいのかまで考えて行動することが求められることがある。そのためには、生理学の知識が必要になる。実際、福祉楽団では、新入職員の研修でマウスの解剖を通して生理学を習得するプログラムまである。
  
int011_morinoie_kiji1「やさしい介護、ぬくもりある介護というような形容詞で表される介護は、介護を誤りに導くことも多い。「やさしさ」ももちろん大切だが、介護を形容詞だけで語るのでなく、科学的な根拠を持った介護を実践していくことが必要だと考えています。科学的な根拠をもったケアの実践には解剖生理学が不可欠で、これをなくして専門職には成り得ません。これらは、ナイチンゲールの看護思想をベースにしており、介護は高度な知識や技術が伴うものだということを理解させています」(飯田氏)という。
  
福祉楽団の理念の1つに「ケアの視点でお客様をみつめる」ということを掲げているが、専門職としての技量を高めるとともに、「ケアのものさし」を活用して、ケアであるものと、ないものを見分ける眼を養うことが明記されている。生命の維持過程・回復過程を促進する援助、生命力の消耗を最小にする援助といった「ケアのものさし」は、ナイチンゲール看護思想を基盤とし、看護と介護を統合した思想体系を持つ看護・介護原論「KOMI理論」であり、ケアの視点を共有する基盤として設立当初から取り入れているという。
  
介護サービスの質の向上を図る上で、介護職員の専門性を高めることが必要であるのは明白。介護職員として職務にあたる上で必要となる基礎的な姿勢や知識・技術を習得する研修制度はあるが、解剖生理学まで新人研修で実施している施設はほとんどないだろう。介護とは何かという普遍的な原理として、科学的な根拠を持った介護を実践できる職員を育成すること。それが福祉楽団の特徴の1つといえる。

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参考資料

KOMI理論

ナイチンゲール看護思想をベースに構築されたもので、ナイチンゲールによって確立された「看護の原理」にそって、看護と介護の実践の本質を解明すべく思考した理論。(ナイチンゲール看護研究所 主席研究員 金井一薫氏が提唱/ナイチンゲール看護研究所ホームページより)