「シンシア」(刈谷市)と「シンシアいずみ」の2カ所でデイサービスを中心に介護福祉事業を展開するJAあいち中央(あいち中央農業協同組合)。利用者はサービス受益者であると同時に出資者(経営者)という特殊な事業環境にあって、両者のニーズを満足させるサービス提供のために徹底した利用者中心主義を貫いている。利用者本意の介護サービスはどうあるべきかを常に問い、介護スタッフには考える介護、考えさせる介護を徹底する。

JA(全国農業協同組合)グループの福祉事業は、現在全国で715組織の中で約330のJAが約1000カ所で居宅介護支援事業、訪問介護事業、通所介護事業、福祉用具貸与事業などに取り組んでいる。その中の1つであるJAあいち中央は、2003年以降、現在2カ所でデイサービス「シンシア」を展開。今春、新たに刈谷北部に同サービス所を開設し、来年度にはさらに2カ所でのサービス展開を計画している。
組合員である農業従事者の減少、高齢化などさまざまな課題を抱えるJAだが、その中で介護福祉事業の運営も多くの課題を持つという。JAあいち中央がある愛知県の中央部は、広大な優良農地を持ち、日本デンマークと称され農業の先進地といわれた。しかし、現在は自動車産業に代表される工業地でもあり、農業中心の事業展開は難しい環境にある。組織生活部福祉健康相談センターのセンター長 杉浦富士宏氏は、JAあいち中央が介護福祉事業を始めた背景、姿勢を次のように述べる。
「これまで農協を支えていただいた組合員の高齢化が進み、そうした方々が要介護状態になったときに生活を支援していくのは必然。介護保険制度が始まる以前から福祉活動は行われてきましたが、高齢化し介護が必要になった組合員をきちんと支えていく事業としてあらためて積極的に取り組んでいます。一方で、JAの介護福祉事業は、組合員の次世代対策という側面もあります。高齢化した組合員の二世、三世はJAとの関わりがなくなるケースが多く、組合員数は減る一方。介護支援という形で介護をする若い世代の人たちとの接点となり、JAを理解していただく入り口になれば、というのも大きな要素です」。
シンシアの利用者の約8割が組合員。介護サービスの利用者であるとともに、組合出資者であるわけだから経営者側という側面もある。「利用者であるとともに経営者である点が、民間の介護福祉事業者と大きな違いです。そのため、利用者が望むサービスと経営者が望むサービスを同時に満たす必要があります。したがって、徹底した利用者中心主義でサービス事業に取り組む必要があるわけです。これがすべてのサービスと事業のベースになっています」(杉浦氏)。
利用者第一主義はどの介護福祉事業者も掲げるモットーだが、姿勢だけでなく、真の事業として、そして利用者のためのサービスという視点の重さが民間事業者と大きな違いだと強調する。
JAあいち中央は今後も新たな施設開設を計画しているが、杉浦氏は利用者本位主義がぶれることなく徹底していくならば、同じデイサービス施設であってもサービスメニューや実施するグループリクレーション、運営手法が異なってもいい、一元化したサービス内容にする必要はないと言い切る。
こうした利用者中心主義は、介護の現場においては「利用者の個を重視した介護サービス」を徹底することで貫かれている。介護事業統括責任者の岩井裕美子氏は、その利用者の個を重要視したサービスを徹底するために「考える介護、考えさせる介護」を介護現場の職員に求めているという。