利用者を起点とするサービスを徹底 それを実現する職場環境と人材育成

利用者を起点とするサービスを徹底 それを実現する職場環境と人材育成

石田昌男氏|社会福祉法人 富士園 地域福祉総合サービス施設 梅津富士園 施設長

地域福祉総合サービス施設「梅津富士園」は、保育園と同じ敷地内に特別養護老人ホームやデイサービスセンターを運営し、園児と利用者が触れ合いながら過ごす、全国的にも希有な施設だ。世代間交流が日常的に自然に行われる環境は、利用者にとって刺激となり、精神的なQOLにも寄与している。そうした環境の中で、「すべての行動は利用者の視点から」という理念に向けて、どのような運営を行っているのか、石田昌男施設長に伺った。

利用者を起点とするサービスを徹底 それを実現する職場環境と人材育成
社会福祉法人 富士園
京都市右京区梅津地区で1969年に富士保育園を開設、1993年に同所で介護事業を開始。特別養護老人ホーム(定員50人)、ショートステイ(定員4人)、デイサービス(1日定員30人)、居宅介護支援事業、京都市梅津地域包括支援センター、配食サービス(京都市委託事業)などの事業を展開する。

幼児からお年寄りまで共に過ごす複合施設

梅津富士園は、同じ敷地内に保育園を併設する全国的にも珍しい介護施設だ。70歳を超えた初代理事長が、1969年に共働き家庭が増えつつあった梅津地区で「地域のために」という信念で保育園を開設したことに端を発している。その地域還元という信念は現理事長(石田武彦氏)に引き継がれ、1993年に特別養護老人ホーム事業を開始し、幼児からお年寄りまで共に過ごす複合施設として運営されてきた。
 
「少子高齢化の進展で世代別世帯が増え、自宅にお祖父さん、お祖母さんのいない家庭が多い。ここでは、子どもとお年寄りの交流がさまざまな行事はもちろん、日々の生活の中で繰り広げられています。餅つき大会ではお年寄りが餅のつき方やまるめ方を教え、誕生会では子どもたちがお年寄りのために歌を披露し、お互いが身近に触れ合うことが生活の張りや楽しみにつながっています。窓一つ隔てた環境でお年寄りと子どもたちが空間・時間を共にすることで、精神的なQOL向上に相乗効果を生み出しています」。梅津富士園施設長の石田昌男氏は、園児とお年寄りが共に過ごす環境のメリットをこう指摘する。
 
かつて日本の地域社会、家庭で当たり前に見られた姿が、梅津富士園にはある。季節ごとの合同行事だけでなく、雨の日に地域を散歩できない園児がホームへ遊びに訪れるなど、日常的に世代間交流が図られている。当初から狙ってつくられた環境ではないものの、お互いが触れ合い、刺激し合って、笑顔や暖かみが醸成され、「当たり前の生活」が送れる環境が出来上がっているのである。
 
また、梅津富士園の職員にとっても、身近に園児たちがいることで、自然と明るさや笑顔が生まれ、楽しみつつ働ける職場環境がつくられているという。
 
その職員に対して、石田施設長が求めるものは、「すべての行動は利用者の視点からスタートします」という施設理念が表すように、利用者が生き生きと、楽しく生活できるようにするために、利用者それぞれを起点にした介護がどうあるべきか常に考えて行動することだと強調する。

質の高い職員が安定して働ける環境が利用者本位のサービスをもたらす

int013_umezufujien_kiji1「適切な介護、利用者本位のサービスを提供できる前提は、あらゆる意味で質の高い職員が向上心を持って、安定的に働き続けてくれることだと思います」。石田氏はこう力説し、介護スキルアップのための研修や資格取得支援体制の充実を図り、職員の自己向上に向けたモチベーションを常に持てるようバックアップに務めている。
 
梅津富士園では特養、デイサービスセンター、医務、調理部門を含め、約70人の職員が在籍する。平均年齢は30歳を下回り、特に介護職は20代後半から30代前半が最も多く、近年は介護専門学校の新卒者を採用するケースが増えている。それゆえ、OJTを中心とした介護力の向上や研修を通したコミュニケーション力を備えた人材育成には、数年前から一層力を注ぐようになったという。
 
OJTでは配属先の先輩職員が一対一で新人職員の教育を担当し、日々の業務の指導や相談に乗りながら1年をかけて一人ひとりの成長を見守る。育成の成果を認識できるよう、チェックリストに基づいて育成目標を設定するとともに、定期的な面談を通じて達成度の確認を行っている。一方、全職員を対象に2カ月に1回開催される「全体会」では、介護や看護の専門講師を招いてスキルアップを図っている。
 
また、介護・看護の質向上の一環として資格保持者を増やすことにも務めている。入職後の各種資格取得のために、業務としての研修への派遣や資格取得に伴う費用負担など、施設として全面的なバックアップ体制を築いてきた。「自分でキャリアプランを描け、それを実現できる環境、職場全体がレベルアップを常に考えて業務に当たる環境があってこそモチベーションを高く保って働けます。試行錯誤の連続ですが、そうした職場環境ができつつあり、離職率も低くなったと自負しています」(石田氏)と、人材育成をはじめとした施策の成果を述べる。
 

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