障害者が共に暮らし、共に働ける地域社会の実現を目指す

障害者が共に暮らし、共に働ける地域社会の実現を目指す

涌井幸夫氏|社会福祉法人 中越福祉会 みのわの里 工房こしじ園長

中越福祉会(新潟県長岡市)は、多数の就労移行支援・就労継続支援事業所とグループホーム/ケアホームを運営し、障害者が地域社会で生活していくためのサポートに注力している。差別や偏見を払拭し、障害がある人とない人が共生・共働する地域社会を目指そうとする取り組みを、みのわの里 工房こしじ園長の涌井幸夫氏に聞いた。

障害者が共に暮らし、共に働ける地域社会の実現を目指す
社会福祉法人 中越福祉会
1981年に身体障害者療護施設(定員:生活介護56人、施設入所支援50人)、翌年に知的障害者入所更生施設(定員50人)を開設。現在は、このほか就労移行支援・就労継続支援B型・生活介護など多機能型施設を中心に8カ所の事業所を運営する。また、障害者の居住施設事業として15カ所のグループホーム/ケアホームを開設・運営する。

障害者の地域共生の実現を目指して始めたグループホーム

かつて新潟県は、障害者に密着した地域に小規模の障害福祉施設を適正配置するために「ミニコロニー構想」を発表し、県下各地に心身障害者向けの入居施設が誕生した。中越福祉会も、中越地区各市町村の支援と保護者の要望・期待を受けで、身体障害者療護施設と知的障害者入所更生施設を1981年、82年に開設した。その後、1995年に最初のグループホーム「しぶみ寮」を、翌年に通所授産施設「工房ますがた」を開設したのを皮切りに15のグループホーム/ケアホーム、8カ所の障害者就労支援施設をオープンし、障害者が地域の中で共生・共働する社会を目指して取り組んでいる。
 
int014_koshiji_kiji1人口約1万3000人の旧越路町(2005年に長岡市に合併・編入)に、15カ所ものグループホーム/ケアホームがあるのは非常に希なケースだという。その最初のグループホーム開設に至った背景には、かつての入所施設が抱えてきた数々の問題、保護者の事情があった。そのエピソードをみのわの里 工房こしじ 園長の涌井幸夫氏は、次のように振り返る。
 
「ある入所施設利用者が就労可能な状況になり、本人の希望もあって、保護者に就労を打診したところ、『自宅からの就労は困る。ずっと置いてほしい』と強く反対されました。当施設に入所させたのは生涯利用できると考えたからで、就職なんてしなくていいという返事でした。では、住み込みにしたらどうかと提案したら、それならいいという。要は、自宅に帰って一緒に暮らすことによって、家族の仕事や生活に支障があるという理由からだと理解できました。それなら、障害者に住む場所を提供し、通所で授産施設を利用でき、あるいは就労できる環境を作ろうとなったわけです」(涌井氏)。
 
自分の子どもが自ら就労できるようになったことを喜ばない親はいないはず。ところが、二十数年もの間施設生活を送った人が退所して自宅通勤になったとき、本人の部屋はすでになく、家族環境も大きく変わり、居場所もない。われわれ福祉に携わる人間は、障害を持った人たちも地域社会の中で生活することが重要だといいながら、入所施設に偏ったサービスしか提供してこなかったのではないか、それでいいという職員の意識にも問題があった――そうした反省に立って地域社会で生活できる具体的な施策に取り組むべきだった、というわけである。

15年を経て地域住民の理解が進む

ところが、最初のグループホーム開設は順調に運んだわけではなく、さまざまな困難がつきまとったという。その1つが、地域住民の障害者施設受け入れの意識だった。中越福祉会はそれまでも入所施設でのさまざまな地域交流活動を通じて開かれた施設、地域とともにある施設をPRしてきた。住宅地域へのグループホーム開設にあたり、そうしたポリシーを訴えて何とか住民に理解をしてもらったものの、いざ開設場所が決まると周辺住民からはやはり受け入れられないと強硬に反対されたという。行政や警察、地区の委員などに協力を求めながら何度も説明会を開いて、ようやく開設を理解してもらったと当時を振り返る。
 
int014_koshiji_kiji3グループホーム第1号オープン以降、通所授産施設も開設して地域社会の中で障害者が一緒に暮らし、働く環境に対する偏見も徐々に少なくなり、毎年のようにグループホーム/ケアホームを開設して現在に至った。今では93人の障害者が地域社会で生活し、町のあちこちに姿が見られるようになり、地域が大きな変化を見せつつある。「今では空き家をグループホームとして自ら提供してくれる人も出てきたし、世話人として勤められるかという問合せも多くなりました」(涌井氏)と感慨深く語る。
 
グループホーム/ケアホームの運営で、涌井氏が最も重視しているのは「安心・安全」である。「利用者の安心・安全はもちろん、地域住民の安心・安全も保証するために24時間365日の支援が不可欠。支援者の人手が確保されていれば、障害の重い人もグループホームでの生活は十分可能」(涌井氏)。その施策として「安心・安全コールセンター」を組織している。障害者総合支援センター事業として運営する同コールセンターには、24時間(宿直)対応職員3人と、生活支援コーディネーター1人を配置。24時間365日の緊急対応、居宅介護、行動・移動支援、および相談体制を築き、利用者の生活をバックアップする。

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