障害者が共に暮らし、共に働ける地域社会の実現を目指す

障害者が共に暮らし、共に働ける地域社会の実現を目指す

涌井幸夫氏|社会福祉法人 中越福祉会 みのわの里 工房こしじ園長

中越福祉会(新潟県長岡市)は、多数の就労移行支援・就労継続支援事業所とグループホーム/ケアホームを運営し、障害者が地域社会で生活していくためのサポートに注力している。差別や偏見を払拭し、障害がある人とない人が共生・共働する地域社会を目指そうとする取り組みを、みのわの里 工房こしじ園長の涌井幸夫氏に聞いた。

障害者が共に暮らし、共に働ける地域社会の実現を目指す
社会福祉法人 中越福祉会
1981年に身体障害者療護施設(定員:生活介護56人、施設入所支援50人)、翌年に知的障害者入所更生施設(定員50人)を開設。現在は、このほか就労移行支援・就労継続支援B型・生活介護など多機能型施設を中心に8カ所の事業所を運営する。また、障害者の居住施設事業として15カ所のグループホーム/ケアホームを開設・運営する。

福祉施設から民間企業へ―発想の転換を図った授産施設

地域社会の中で障害者が暮らす支援とともに、就労についてもさまざまな取り組みを展開している。現在、8カ所ある授産施設の定員は、就労支援移行が78人、就労継続支援B型が60人、生活介護が38人。これまでに十数人が企業に就職し、今年も3人が就職する実績を上げている。
 
授産施設の運営に関する一般的な課題は、製品の品質が低いだろうというイメージと、収益性の極端な低さで、その結果としての工賃の金額の極端に安さである。涌井氏は障害者の自立生活を支援し、かつ施設運営を健全化するため、まず『福祉施設で作ったものだから、安かろう・悪かろう』というイメージを払拭し、作り出すものの品質を上げる意識改革。そして、品質とともに納期厳守といった民間企業への発想転換だと指摘する。作業所の整理・整頓といった基本的な就労環境の整備に始まり、職員の支援と作業の役割の明確化による利用者のスキルアップ、良品と納期厳守の徹底、作業量確保のために職員が営業活動に従事するなど、活動継続のための施策を展開する。
 
また、特徴的な取り組みとして、住民との共同作業がある。退職した高齢者などを対象とした地域住民から施設に通ってもらい、有償作業支援員として障害者と一緒に作業するのである。この取り組みで3つのメリットがあると涌井氏はいう。「まず、日頃は職員と接する機会しかない障害者が、地域住民とコミュニケーションできる環境の中でいろいろな人間関係を築く訓練になること。一方、地域の高齢者にとっては、働くことの生き甲斐を再び見いだせること。『わずかな収入にしかならないが、障害者から元気をもらって帰れる』という声もあり、施設の応援団になっていただいている」と、障害者と地域住民の共働に大きな意義があるという。そして、3つめが地域住民の労働力を加えることによる生産性向上への寄与だ。「作業品質も上がるとともに、忙しくても納期を守れる算段ができるため、企業からの作業委託量も増え、施設経営にも大きなメリットをもたらすようになりました」(涌井氏)。
 
新たな授産施設の取り組みとして、2010年10月には民間企業内に就労支援施設を開設。障害者が企業で働く機会を提供するとともに、利益も追求する新しいビジネスモデルを目指している。この「みのわの里 ワークセンター北陽」は、額縁製作のアートナカムラ(長岡市北陽)内に1000平方メートルのスペースを借り受け、就労移行支援・就労継続支援B型各10人の障害者と職員を派遣して作業を行っている。「利用者が働きやすい作業工程の見直しなど企業の協力も必要ですが、障害のある人とない人の働く環境が身近にあることが重要で、障害のない人が障害者への接し方やコミュニケーションの仕方を覚えることにもなり、さまざまな偏見の払拭にもつながります」(涌井氏)。来年にはもう1カ所、同様の企業内授産施設の開設を計画しているという。

障害者を福祉の受け手から担い手に。施設を地域の社会資源に

int014_koshiji_kiji2涌井氏が目指すのは、障害がある人もない人も安心して暮らし、働き続けられる共生社会の実現である。「差別や偏見は、地域の人たちが障害者を知らないことを理由とする不安です。グループホームによる地域で共に生活する環境の整備、企業内授産施設などによる共働の仕組みなどで、障害者を知る機会、お互いが接する機会を醸成してきました。いま考えていることは、障害者が『福祉の受け手から担い手』になっていくためにどうすべきか」だという。
 
そのための1つの施策として、地域の一人暮らしの高齢者を対象にした買い物支援、通院支援、自宅周辺の作業支援による地域支え合い活動を始めている。単独で買い物や通院が困難な高齢者に対して、施設の車で迎えに行き、同乗する障害者がスーパーなどでの買い物の手伝いや通院の介助をするもので、無償で行われる。一方、自宅周りの作業支援は除草や除雪などを対象とし、障害者が代わって作業する。1時間350円から作業料が決められている。
 
「最初は、移動販売車による食料品や日用品の販売、または買い物の御用聞きをしようと考えましたが、それでは高齢者にとって便利ではあっても外出する機会がなくなる。一緒に行動することで、高齢者の活動支援にもなるし、お互いが支え合って生活するという意識につながると思っています」(涌井氏)。まさに福祉の受け手から地域社会の担い手になる一助といえる取り組みだ。この基本方針が理解され、新潟県地域支え合い体制づくり事業に採択され、実施に移された。
 
涌井氏は、障害者が地域社会の担い手となるよう支援するのが障害者施設の役割の1つであると同時に、社会資源を使って施設を運営するだけでなく、施設自身が地域の社会資源になる努力が必要だと力説する。「障害者の生活を支援することはもちろんだが、障害者支援を通して地域社会を変えていくことが、われわれの仕事だと考えています」と結んだ。

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