質を底上げする暗黙知の活用

質を底上げする暗黙知の活用

神成 淳司 氏 | 慶應義塾大学 環境情報学部

質の高い介護を目指し、新しいDCM(認知症ケア・マッピング)等に取り組む神成 淳司氏(慶應義塾大学 教授)は、より良い介護とは「マニュアルに頼らず、気づきを生みだすこと」だと語る。介護現場の支援ツールとして、ニンテンドーDSでは初めてとなる業務用ソフト「すぐろく」を開発した神成氏にその開発経緯を聞いた。

質を底上げする暗黙知の活用
神成 淳司 プロフィール
工学博士。慶應大学で環境情報学について教鞭をとるかたわら、小規模農家をITで結ぶ実験、日本経済をソフト面から強化、地域における人材教育についての研究に取り組んでいる。個人のホームページ「SHINJO Atsushi on the web」も開設している。好きな言葉はJonas Salkの"Hope lies in dreams, in imagination and in the courage of those who dare to make dreams into reality."。

lab_shinjo_1002従来のマニュアルでは補えない現場のノウハウ

私の興味は、人間の、経験に基づくノウハウの解析と活用です。暗黙知とも呼ばれるこのノウハウは、様々な現場において、労働生産性や技術の向上を司る重要な存在ですが、実際に解析し活用することが非常に難しいものでもあります。

例えば、施設介護の現場で働く様々な方々の中には、入居者の何気ない不満や不安によく気づき対応してくださる方がいます。その方のノウハウを多くの働く方々の中で共有すれば、入居者の満足度は高まるでしょう。ただし、「不満や不安の気づき方」のマニュアルを作成すれば良いというものではありません。入居者一人一人は異なる個性を持っています。マニュアルに記載された内容をそのまま実施するのではなく、その方の個性に即した対応が重要なのです。

現場と乖離したIT活用

私は今まで、製造業を始めとした様々な分野においてノウハウの解析と活用に取り組んできました。ここ最近は、農業分野にも軸足を置いています。介護現場に関しては、10年ほど前から様々な社会福祉法人を訪問させて頂き、どのようなノウハウが重要であるかを考えてきました。この訪問の中で気づいたのが、この業界におけるITに関する取り組みが不足しているという点です。具体的には、介護現場で働く方々の作業を支援するためのものです。入居者一人一人との触れ合いが重要な介護現場において、従来のITはあまり貢献が出来ていませんでした。それどころか、旧態依然としたコンピュータのキーボードでのデータ入力は、介護現場で働く方々の負担を増していました。

介護現場と相性がよいゲーム端末

「この状況を、異分野で活用されるITを活用して改善できないのか」。
そこで思いついたのがゲーム端末の活用です。

多い月には数万台が販売されるゲーム端末は、素晴らしい機能が搭載されているにも関わらず非常に安価に購入することが可能です。端末の種類によっては、手書き入力も可能で、壊れにくく、小型で持ち運びも容易です。従来の業務端末とは異なる、新しい方向性を見出す事が出来ました。

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