きになる”福祉の時事ニュース

Vol.1 経済連携協定 ─ 介護現場に外国人がやってくる?

塚崎 朝子 氏 | ジャーナリスト

その場しのぎか、長期的人材育成か? ── 超高齢社会に向け、介護現場の慢性的な人手不足には拍車がかかる。そこで切り札の一つとして期待されているのが、外国人スタッフの活用かもしれない。

介護士候補480人が日本で研修中

経済連携協定(EPA)※に基づき、まず2008年にインドネシアから、次いで09年にはフィリピンからの介護福祉士候補が来日しており、全国の施設で総勢約480人を受け入れている。
 
候補者は母国で看護学校もしくは高等教育機関(大学)を終えており、半年程度の介護研修を修了していることが要件。来日後は半年間の日本語の集合研修を受けた後、マッチングにより各施設に分かれ、就労しながら研修する。引き続き日本で働くには、在留期限4年以内に日本で国家試験に合格する必要がある。受験資格に3年間の実務経験が課されているため、事実上、受験は1回きりだ。
 
フィリピンからの候補者の場合、さらに就学コースもあり、日本で介護福祉士養成校に通うことで、国家資格が得られなくても日本で働き続ける道が残されている。在学中は週28時間以内のアルバイトは許可されるが、授業料や生活費の負担があり、援助がない施設は応募段階で敬遠され、大きく定員割れしている。

日本語の壁 費用負担の現実

同時に看護師候補も来日しており、今年2月に行われた看護師国家試験では、254人が受験して合格者は3人。難解な日本語の試験を突破したことは快挙だが、全体の合格率が約9割という中では“惨敗”とも言える。介護福祉士試験の場合、全体の合格率でさえ約5割で、そこにワンチャンスでは厳しさが募る。受け入れ先施設では、渡航や先の日本語研修の費用などの1割として約60万円を負担しなくてはならない。
 
また、研修中は雇用契約を交わし、手当を支給する。一部を仕送りして、残りを生活費に充てている人が多い。教育や国試対策は、費用を含めて受け入れ先に一任されているが、今年度からは一部国から補助される。また、長妻昭厚生労働大臣は、難解な日本語の試験問題について言い換えを検討する方針を明らかにしている。
 
厚労省が、インドネシア人介護福祉士候補の来日から1年後の09年夏に発表した調査結果では、候補者側の9割が日本語について「理解できている」と答え、受け入れ側職員の約7割は「時々話が通じないが、ゆっくり話せば概ね伝わる」と回答している。東京都社会福祉協議会が、都内の特別養護老人ホームを対象に実施した調査では、回答した316施設のうち、約3分の1に当たる101施設で196人の外国人が就労している実態が明らかになっている。最多はフィリピン人の109人だった。非正規就業者が3分の2を占める一方、介護福祉士やヘルパー2級の有資格者もいた。
 
外国人労働者を一時的な人手不足解消策と見るだけでなく、長期的視野に立った人材育成にまで高められだろうか。
 

2010年4月17日執筆

Vol.1 経済連携協定 ─ 介護現場に外国人がやってくる?
つかさき・あさこ プロフィール
読売新聞記者を経て、医療・医学、科学・技術分野のジャーナリスト。経営学修士(MBA)、医療管理学修士。週刊エコノミストで「大人の悠遊 からだチェック!」、メディカル朝日で「命を紡ぎ出す〜再生医療の現場から」連載中。著書に『看護のための経営指標みかた・よみかた超入門』(共著、メディカ出版)ほか。東京医科歯科大学大学院医療政策学博士課程在籍。

補足資料ナナメ読み

経済連携協定(Economic Partnership Agreement:EPA)

2国間または複数国間で、広く経済関係を強化することを目的として締結する経済条約の一つ。自由貿易協定(FTA)を柱としており、域内の貿易や投資の自由化・円滑化を促進する。関税撤廃など物の貿易に関することだけでなく、専門家や技術的職種での就労や、短期滞在条件の緩和なども含まれる。今回、インドネシア、フィリピンとの間で発効したEPAにより来日した看護師候補・介護福祉士候補は、日本語を初めて学ぶ人が大半であった。一定の日本語力に達してない人に対しては、来日半年間の研修で、集中的に日本語能力を身に着けさせている。