きになる”福祉の時事ニュース

Vol.8 医療機関で進む地域連携パス 介護にも評価を拡大できるか

塚崎 朝子 氏 | ジャーナリスト

「地域連携クリティカルパス」(以下、連携パス)を介した医療機関同士の連携が進む。今後は、医療と介護の連携をも視野に入れた「介護連携パス」の整備と、介護側の評価も課題となってくる。

 07年の第5次医療法改正を受け、医療機関を問わず、多職種の医療スタッフがかかわって連携を構築するためのツールとしての連携パスの重みが増している。背景には、急性期病院には患者が集中して医療者の疲弊や患者の不満増大を招いていること、DPC(診断群分類包括評価)導入により在院日数の短縮が余儀なくされていることなどがある。かつてのような一病院完結型ではなく、医療機関の機能分化と連携による地域完結型医療へのシフトが模索されている。
 
 連携パスは、これまでの診療情報提供書を介した医療連携とは異なり、急性期病院から回復期病院を経て早期に自宅に帰れるような診療計画を作成し、治療を受けるすべての医療機関で共有して、チームで医療に当たるものだ。診療内容や達成目標等も明示される。各医療機関の役割分担を含め、患者はあらかじめ診療内容に説明を受けられ、安心感が増す。連携医療機関では、患者の状態を事前に把握でき、重複した検査をせずに済むなど、効用は大きい。PDCAサイクルを回して医療を進化させていく点も特徴となっている。
 
 疾患の種類により、連携パスは大きく2つに大別され、大腿骨頸部骨折や脳卒中のように、急性期→回復期→維持期へと流れていくパスは、「一方向型」。これに対し、がんや糖尿病、骨粗鬆症などは、専門医とかかりつけ医の間を定期的に往き来する「双方向型」が基本となっている。診療報酬上は、06年にまず大腿骨頸部骨折に導入され、08年に脳卒中に、10年にはがんにも拡大された。
 
 現状の連携パスは、医療機関間の連携に限定されているが、入院中に、医療機関と介護施設や介護サービスとをつなぐきちんとした道筋をつけておかなければ、退院後に支障を来しかねない。このため、医療機関から介護施設や在宅へとつなぐ連携、さらには介護サービス提供者間の連携のためのツールとしての「介護連携パス」が模索されている。
 
 10年の診療報酬改定では、「介護支援連携指導料(300点)」が新設され、医療機関は、居宅介護支援事業者等と連携して退院後の介護サービス等について共同して指導を行った場合に算定できるようになった。また、これに先立つ08年には、「退院時共同指導料」として、医療機関の医師等が、介護支援専門員を含む3者以上と共同して指導を行った場合は、2000点が加算される。訪問看護師などにも、退院時に連携した場合には報酬が算定できるようになったが、介護支援専門員に対する評価は、09年の介護報酬改訂まで待たなくてはならなかった。 
 

医療・介護の連携をより円滑に進めていくには、12年度の診療報酬・介護報酬同時改定へ向け、介護側を評価しインセンティブを付けていけるかも鍵となる。

Vol.8 医療機関で進む地域連携パス 介護にも評価を拡大できるか
つかさき・あさこ プロフィール
読売新聞記者を経て、医療・医学、科学・技術分野のジャーナリスト。経営学修士(MBA)、医療管理学修士。週刊エコノミストで「大人の悠遊 からだチェック!」、メディカル朝日で「命を紡ぎ出す〜再生医療の現場から」連載中。著書に『看護のための経営指標みかた・よみかた超入門』(共著、メディカ出版)ほか。東京医科歯科大学大学院医療政策学博士課程在籍。

補足資料ナナメ読み

【第5次医療計画】

厚生労働省「医療計画の見直し等に関する検討会」の審議を受け、06年に第五次医療法改正が成立(07年施行)。少子高齢化時代における新たな高齢者医療制度の創設、生活習慣病対策や在宅医療の推進などを柱とし、①医療機能の分化・連携を推進し、切れ目のない医療を提供すること、②早期に在宅生活へ復帰できるようリハビリテーション及び在宅医療の充実を図ることを目標とする医療計画の基本的な枠組みが規定された。各都道府県の地域医療計画において、4疾病5事業(脳卒中、急性心筋梗塞、がん、糖尿病、救急医療、災害時医療、へき地医療、小児医療、周産期医療)のそれぞれについて医療連携体制を構築することが求められた。