きになる”福祉の時事ニュース

Vol.10 若年性認知症3万8000人 ケア提供者の意識改革も鍵

塚崎 朝子 氏 | ジャーナリスト

 65歳までに起こる若年性認知症患者は、国内約3万8000人弱がいるとされている。働き盛りの現役世代であったり、家庭でもなお役割が大きいことから、適切な支援が望まれている。

 日本では人口の超高齢化に伴って認知症患者が急増しており、70歳で約7%、85歳以上になれば4人に1人以上が認知症を患っているとされる。一方、若年性認知症は、18~44歳で発症する若年期認知症と45~64歳で発症する初老期認知症を総称したもので、原因疾患では脳血管障害性が4割近くを占め、次いでアルツハイマー病(AD)である。若年性の場合は、遺伝性のことも多い。
 
 ADの症状は若年性であっても物忘れが中心であることは変わらないが、高齢の場合と比べて、近時記憶障害や不安症状が強いことに加えて、MMSE(認知機能検査)の低下が急速であるといった特徴がある。職場では、仕事の能率が低下し、欠勤を繰り返すことになりがちだ。
 

制度の狭間で経済的困難を抱える

 若年性認知症は、福祉の制度から抜け落ちがちになることが多い。例えば、栃木県が2010年に医療機関や介護保健施設に対し調査を実施したところ、県内に456人の患者がいたが、その3人に1人は介護認定を受けていないうえ、障害者手帳を持っていない人も56%に達していた。発症年齢の平均は53.9歳で、常に監督者が必要な重度の人が45.3%と最多で、中等度が30.3%、軽度19.2%。仕事は、以前は就いていた人が78%、休職中4.6%で、続けている人は5.6%しかおらず、退職に追い込まれている可能性や経済的な厳しさが浮き彫りになった格好だ。
 
 東京都保健福祉局では、在職中に発症した若年性認知症患者に対して職場の理解を深めてもらうおうと、『若年性認知症ハンドブック』を作成し、企業などに向けて配布した。特徴的な症状、職場での対応のしかたに加え、利用できる制度やサービスなどが60ページにわたって記載されており、インターネットからダウンロードすることも可能だ。(http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2010/12/DATA/20kc3300.pdf)
 
 また、厚生労働省では09年から、社会福祉法人仁至会:認知症介護研究・研修大府センターの運営で、若年性認知症の無料電話相談(0800-100-2707=フリーダイヤル)を開設しており、月~土曜日(年末年始・祝日除く)の10~15時の間、情報を提供している。
 
 11年1月には、同センターが主催して、若年性認知症の患者本人や家族らが、厚労省などの担当者と必要な支援について話し合う「若年性認知症施策を推進するための意見交換会」が開かれ、経済的な支援の充実や家族の負担軽減などを求める切実な声を寄せている。
 
 若年性認知症への対応は、介護保険制度や障害者制度だけでは不十分で、就労
支援などとも有機的に結び付けていかなくてはならない。ケアマネジャーの意識改革が求められるのは言うまでもない。

Vol.10  若年性認知症3万8000人  ケア提供者の意識改革も鍵
つかさき・あさこ プロフィール
読売新聞記者を経て、医療・医学、科学・技術分野のジャーナリスト。経営学修士(MBA)、医療管理学修士。週刊エコノミストで「大人の悠遊 からだチェック!」、メディカル朝日で「命を紡ぎ出す〜再生医療の現場から」連載中。著書に『看護のための経営指標みかた・よみかた超入門』(共著、メディカ出版)ほか。東京医科歯科大学大学院医療政策学博士課程在籍。

補足資料ナナメ読み

【若年性認知症の生活実態調査】

厚生労働科学研究「若年性認知症の実態と対応の基盤整備に関する研究」(2006~08年度、主任研究者=朝田隆・筑波大学教授)によれば、基礎疾患の内訳は、脳血管障害者(39.8%)、アルツハイマー病(25.4%)、頭部外傷後遺症(7.7%)、前頭側頭葉変性症(3.7%)、アルコール性認知症(3.3%)、レビー小体型認知症/認知症を疑うパーキンソン病(3.0%)の順だった。介護家族の調査では、最初に気づかれた症状は、もの忘れ(50.0%)、行動の変化(28.0%)、性格の変化(12.0%)、言語障害(10.0%)。家族介護者の約6割が抑うつ状態にあった。発症後7割の収入が減少。介護者の多くが、若年性認知症に特化した福祉サービスや専門職の充実の必要性を訴えた。