きになる”福祉の時事ニュース

Vol.12  災害弱者への備えは万全か? ~介護の視点編~

塚崎 朝子 氏 | ジャーナリスト

いつ襲ってくるか分からない火災や天災。災害弱者への備えは万全だろうか。平時にこそ、施設も自治体も確認をしておく必要がある。

2009年7月、山口県の豪雨による土砂災害で、直撃を受けた特別養護老人ホームでは7人が死亡。翌10年の鹿児島県が県内の防災対策について調べたところ、保育所や老人ホーム、医療施設など災害時に介助が必要な人がおり、土砂災害に巻き込まれる可能性のある区域にある県内の施設の周辺区域のうち、約6割では、擁壁や砂防壁の設置などの対策が取られていなかった。
 
また、10年3月には、札幌市北区の認知症高齢者グループホームで火災が発生し、7人の死者を出した。同年4月、総務省が全国1万6140の小規模福祉施設(延べ床面積1000平方メートル未満)を対象に実施した緊急調査では、5541棟(34.3%)が、消防訓練の未実施や防災規制の不遵守など防火対策上で何らかの法令違反があることが判明している。
 
10年2月のチリ地震では、三陸地方でも約5時間後に津波に見舞われた。史上最大の地震だった1960年のチリ地震では、三陸沖を中心に日本でも143人が死亡しており、総務省消防庁では直後の3月に、青森、岩手、宮城3県で避難指示または避難勧告が発令された地域の住民5000人に対して緊急アンケートを実施した(有効回答数2007票)。
 
近海で起きた地震でないこともあり、「避難した」人(指定避難場所以外への避難や津波が到達しない安全な地域への外出を含む)は、37.5%に過ぎなかった。災害弱者への課題も露呈された。市町村における災害時要援護者の避難支援の取り組みを知っている人で「要援護者」は34.9%。これらの要援護者のうち、「避難するよう声をかけてもらった」のは31.6%、「一緒に避難してもらった」は7.8%。合わせて約4割が支援をしてもらっていたが、一方で、「何もしてもらわなかった」人も27.5%いた。
 

支援計画整備も福祉避難所は遅れ

 
国は、災害弱者に向けた対策を進めている。各市町村が策定すべき「要援護者支援計画」はほぼ出そろった。全体計画と、要援護者一人ひとりを支援するための個別計画の二本立てだが、後者は遅れ気味だという。
 
また、阪神・淡路大震災時に、災害弱者が一般の被災者に比べて避難所生活で困
難を強いられた経験などを踏まえ、厚生省(当時)は1997年、全国の自治体に「福祉避難所」を整備するよう通知を出した。既存の福祉施設などを利用、介助員を配置、仮設スロープや手すりの整備などのバリアフロー化をなどが条件とされた。しかし、実際に設置されたのは、2007年の能登震災の発生を受け、内閣府が輪島市に依頼、市の要請に応じた市内の介護老人保健施設が全国で最初だ。
 
10年に同省が行った実態調査では、福祉避難所を指定した自治体は全国で23.8
%にとどまっており、高齢者施設にゆとりがない状況で、施設確保の困難さが課題となっている。 

Vol.12   災害弱者への備えは万全か? ~介護の視点編~
つかさき・あさこ プロフィール
読売新聞記者を経て、医療・医学、科学・技術分野のジャーナリスト。経営学修士(MBA)、医療管理学修士。週刊エコノミストで「大人の悠遊 からだチェック!」、メディカル朝日で「命を紡ぎ出す〜再生医療の現場から」連載中。著書に『看護のための経営指標みかた・よみかた超入門』(共著、メディカ出版)ほか。東京医科歯科大学大学院医療政策学博士課程在籍。

補足資料ナナメ読み

【災害弱者】

防災行政上は、「災害時要援護者」と呼ばれ、1991年度版『防災白書』では、以下のいずれか1つでも当てはまる人とされる。①自分の身に危険が差し迫った場合、それを察知する能力が無い、または困難な者、②自分の身に危険が差し迫った場合、それを察知しても適切な行動をとることができない、または困難な者、③危険を知らせる情報を受け取ることができない、または困難な者、④危険を知らせる情報を受け取ることができても、それに対して適切な行動をとることができない、または困難な者。具体的には、障害者、傷病者、高齢者、乳幼児・子供、外国人、妊婦、旅行者などが想定されている。全国の市町村で、内閣府や総務省などの指導に基づいて、災害弱者の避難支援計画や災害時要援護者名簿の整備が進んでいる。