きになる”福祉の時事ニュース

Vol.14  被災者を支える心のケア   ~介護の視点編~

塚崎 朝子 氏 | ジャーナリスト

復興が遅れ、避難所生活が長引く中で、いわゆる災害弱者に対する支援は欠かせない。身体に障害ある人に比べて、見た目に健康そうに見える精神障害者への支援は手薄になりがちな傾向がある。

被災者を支える心のケア 長期的・段階的な支援を

  
震災に遭った現場では、掛け替えのない人を失ったり、非日常的な生活を強いられることにより、健常であった人でも急激に強い精神的ストレスにさらされる。不眠や不安を訴えたり、後に心的外傷後ストレス障害(PTSD)やパニック障害などを発症する人が増える。加えて、精神を病んでいる人が治療を継続できなくなる恐れもあり、急性錯乱を起こしたり、認知症なども症状が悪化することがある。
 
被災者の心のケアに対応するため、地域の精神科医療体制が軌道に乗るまでの間は、都道府県ごとに組織された精神科医療の専門家チームがおおむね1週間単位で被災地に滞在し、巡回や往診に回って支えているのは心強い。
 
もちろん、専門家以外にも、周囲の人々の日常生活への気配りも重要になる。例えば、認知症について、厚生労働省老健局認知症・虐待防止対策推進室では、「避難所生活における認知症生活の工夫の例」という文書を作成して、関係者に対応を促している。
 
中では、①よく話しかけ、お話にも耳を傾ける。穏やかに、②静かな環境を(可能な範囲で)工夫する、③以前に近い規則正しい生活リズムを目指す、④そっと見守りつつ、必要に応じた声かけを、⑤周囲の方々の理解と
協力が大切、という5項目が盛り込まれている。同じように、統合失調症やてんかんを持つ患者などにも配慮が必要だろう。
 

震災障害者や自殺者の問題も

 
阪神・淡路大震災では、医療体制が混乱して適切な治療が受けられなかったことで、けがや病気が後遺症として残り、後に「震災障害者」という問題も生じた。兵庫県と神戸市では2010年秋、遅まきながら実態調査に乗り出し、328人の身体障害者(うち121人は死亡)について、医師の診断書や申請書などに基づいて震災障害者と認定した。まだ、具体的な支援策が決まったわけではないが、一歩前進と受け止められている。
 
一方で、精神・知的障害者は、この調査からは漏れている。兵庫県と神戸市は、約150人の被災者が、震災をきっかけに精神・知的障害を負ったと推定しており、その調査を開始してはいるものの、身体障害に比べて、その因果関係の立証は極めて難しいとされている。
 
震災後の心のケアは、一過的なものではない。例えば、今後、被災者は、避難所、仮設住宅、災害復興住宅へと転居を繰り返すうち、次第に見知った顔がいなくなって孤独感を増す。阪神大震災後の約4年間で、兵庫県内の災害復興公営住宅で亡くなった独居者のうち、自殺者が32人もいた。もとより東北では、医師が少ない、高齢者が多いという厳しい環境にある。今後も粘り強く段階的に心のケアのあり方を探っていかなくてはならないだろう。

Vol.14   被災者を支える心のケア   ~介護の視点編~
つかさき・あさこ プロフィール
読売新聞記者を経て、医療・医学、科学・技術分野のジャーナリスト。経営学修士(MBA)、医療管理学修士。週刊エコノミストで「大人の悠遊 からだチェック!」、メディカル朝日で「命を紡ぎ出す〜再生医療の現場から」連載中。著書に『看護のための経営指標みかた・よみかた超入門』(共著、メディカ出版)ほか。東京医科歯科大学大学院医療政策学博士課程在籍。

補足資料ナナメ読み

【心のケアチーム】

阪神・淡路大震災(1995年)以降、災害時の心のケアの重要性が広く認識され、精神科医や精神保健福祉士、臨床心理士などがチームを構成し、早期から組織的な対応が取られるようになってきている。東日本大震災では、災害対策基本法第30条に基づいて、厚生労働省に「心のケアチーム」の派遣斡旋の要請がなされ、独立行政法人国立精神・神経医療研究センターおよび各都道府県との間で早急な調整が行われた。3月後半には、派遣可能な期間のみ緊急に活動する体制として35チームを確保し、順次、被災県にて活動を開始した。4月以降は、同一地域で同一都道府県等のチームが継続的に支援 することを原則に、改めて各都道府県と調整が行われ、40チーム以上が確保されている。