きになる”福祉の時事ニュース

Vol.16  震災でケア付き住宅の関心増   ~介護の視点編~

塚崎 朝子 氏 | ジャーナリスト

東日本大震災の被災地には過疎や高齢化が進む地域が多く、死亡した人の過半数を65歳以上の高齢者が過半数を占めると言われる。今後は独居の高齢者の増加が見込まれている中で、ケア付き住宅の重要性が高まっている。

震災でケア付き住宅の関心増 サービス付き高齢者専用住宅

 
2011年4月、「高齢者の居住の安定確保に関する法律等の一部を改正する法律」が、震災直後にもかかわらずスピード可決、公布された。復興への手掛かりになるだろうとの思惑もあって、審議が促進されたと見られている。
 
阪神・淡路大震災後には老人ホームの入居率が上昇したが、今回の震災後も、1人暮らしで不安で抱えながらも見守り付きの住宅に入るのをためらっていた人から、非常時の安心を求めて入居を希望する声が聞かれるようになり、住まいの相談に応じる高齢者住宅情報センターなどへの問い合わせも増えているという。
 
法改正で新たに創設されたのが、「サービス付き高齢者住宅」だ。これまで、高齢者が年齢を理由に入居を拒否されることのない賃貸借契約の住宅として、「高齢者専用賃貸住宅」(高専賃)があり、2005年から都道府県への登録制とされていた。
 
また、高専賃のうち、バリアフリーなど所定の条件を満たしたものは高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)と認定されていた。 施設ではなく住宅という位置付けであるため、老人ホームに比べると利用者の負担が抑えられており、自由度も高いという利点がある。
 
一方、高専賃には、見守りなどソフト面のサービス提供が義務付けられているわけではないため、医療や介護の必要度が増すと住み続けられなくなり、介護施設や病院を探さなくてはならなくなるというデメリットがあった。
 

安否確認と生活相談が必須サービス

 
これを克服しようと、サービス付き高齢者向け住宅では、最低限のサービスとして、安否確認と生活相談が求められるようになる。厚生労働省が12年の介護保険制度改正で新設を予定している24時間対応の訪問ケア「定期巡回・随時対応訪問介護看護」に呼応したものになる。
 
高専賃や高優賃などの制度は廃止されるが、新たに統合して発展させた仕組みになっており、施設基準を満たせば、これまでの高専賃や有料老人ホームが届け出をすることも可能だ。
 
自治体の総量規制によってホームの届け出が不要なことは開設者にとってはメリットで、福祉法人や医療法人、そして一般企業の参入も期待されている。
 
国土交通省予算では、新規や改築の場合、1戸当たり100万円を上限としての補助を行うため11年度予算に325億円を計上しており、初年度だけで3万戸の整備を目指している。事業の募集は5月30日から開始されている。

人材や物件への新たな投資も必要なのはもちろんのこと、業者が乱立しないよう、自治体にはそれぞれの「高齢者居住安定確保計画」に沿って総量規制を行う権利が与えられており、新規参入には熟考が要りそうだ。

Vol.16   震災でケア付き住宅の関心増   ~介護の視点編~
つかさき・あさこ プロフィール
読売新聞記者を経て、医療・医学、科学・技術分野のジャーナリスト。経営学修士(MBA)、医療管理学修士。週刊エコノミストで「大人の悠遊 からだチェック!」、メディカル朝日で「命を紡ぎ出す〜再生医療の現場から」連載中。著書に『看護のための経営指標みかた・よみかた超入門』(共著、メディカ出版)ほか。東京医科歯科大学大学院医療政策学博士課程在籍。

補足資料ナナメ読み

【サービス付き高齢者向け住宅】

登録基準として、床面積が原則25㎡(台所・食堂などが共有であれば18㎡)以上、トイレや洗面設備などの設置、バリアフリー構造、入居者向けサービス(少なくとも安否確認・生活相談の支援サービス)の提供、登録された事項の情報開示、入居者への契約前の説明、誇大広告の禁止、契約に際して前払い家賃に関する返還ルール(初期償却の制限)と保全措置、が定められている。 長期入院を理由に、事業者から一方的に解約できなくなる。条件を満たせば、都道府県知事へ登録できる。トラブル防止のため、行政には、報告・徴収、立ち入り検査や指示などの指導監督権限を持たせ、問題 がある事業者の物件は登録取り消しもあり得る。国土交通省・厚生労働省の共同所管。