きになる”福祉の時事ニュース

Vol.17  サービス付き高齢者向け住宅   ~医療の視点編~

塚崎 朝子 氏 | ジャーナリスト

第5次医療法改正によって医療法人にも経営が解禁された「高齢者専用賃貸住宅(高専賃)」は2011年4月、新たに「サービス付き高齢者向け住宅」の制度に生まれ変わった。医療法人が運営する高齢者住宅は、医療と介護を一体的に提供できる拠点として安心感は高く、引き続き期待が寄せられる。

医療と介護の一体的な提供も サービス付き高齢者向け住宅

 
「社会的入院」の受け皿となっていとして問題視された介護療養型病床は、他施設への転換が間に合わないとして日程が先送りされたものの、廃止の方向が決まっている。
 
一方、入院中の高齢者は医療や介護のニーズが高く、自宅に戻ることが難しい。高専賃はこうした高齢者の住まいと目されると共に、参入した医療法人には、事業の幅を広げて経営のプラスとすることも期待されていた。
 
11年4月に成立した「高齢者の居住の安定確保に関する法律等の一部を改正する法律」に基づいて新たに創設されたサービス付き高齢者住宅は、従来の高専賃と同様に都道府県への登録制となり、最低限のサービスとして、安否確認と生活相談が求められるようになる。
 
これまでの高専賃では医療や介護の必要度が増すと住み続けられなくなるというデメリットがあったのを克服し、厚生労働省が12年の介護保険制度改正で新設を予定している24時間対応の訪問ケア「定期巡回・随時対応訪問介護看護」にも呼応させることになっている。

国土交通省予算では、新規や建て替えの場合、1戸当たり100万円を上限としての補助を行うために11年度予算に325億円を計上しており、初年度で3万戸の整備を目指す。事業の募集は5月30日から開始されている。
 

医療法人ならではの強みを活かす

 
医療と介護を融合させたケア付き住宅には、多様な展開があり得る。例えば、1階にはクリニックと調剤薬局、通所・訪問介護、デイサービスの拠点を併設させ、2階以上を居住スペースに、訪問や通いでケアを受けるモデルがある。
 
さらに高層な造りにして、1階にクリニックモールと調剤薬局、下層階にはヘルパーステーションと介護型高専賃、上層階には自立型高専賃といった複合型モデルもある。
 
医療法人としての強みを発揮するなら、透析クリニックを併設した高専賃、神経内科医院が開設し神経難病患者を受け入れる高専賃(人工呼吸器装着も可能)、あるいは、単に看取りに対応するだけでなく、最初からホスピス型を前面に打ち出す物件もあり得る。病院の場合、敷地内や隣接地に立てれば、利用者の利便性は高まるし、いざという時は入院の体制が取れることも大切だ。
 
人気が高いとされる医療法人が運営する高専賃だが、営利追求や経営の補填が目的では、焦点がぶれる。初期投資も必要で、家賃取入だけでは、決して“うまみのある”ビジネスでもない。医療保険や介護保険で挙げた収入が、療養病床1床分と見合うぐらいの見当で始めるのが良いようだ。

Vol.17   サービス付き高齢者向け住宅   ~医療の視点編~
つかさき・あさこ プロフィール
読売新聞記者を経て、医療・医学、科学・技術分野のジャーナリスト。経営学修士(MBA)、医療管理学修士。週刊エコノミストで「大人の悠遊 からだチェック!」、メディカル朝日で「サムライたちのクスリ」連載中。著書に『看護のための経営指標みかた・よみかた超入門』(共著、メディカ出版)ほか。東京医科歯科大学大学院医療政策学博士課程在籍。

補足資料ナナメ読み

【サービス付き高齢者向け住宅】

登録基準として、床面積が原則25㎡(台所・食堂などが共有であれば18㎡)以上、トイレや洗面設備などの設置、バリアフリー構造、入居者向けサービス(少なくとも安否確認・生活相談の支援サービス)の提供、登録された事項の情報開示、入居者への契約前の説明、誇大広告の禁止、契約に際して前払い家賃に関する返還ルール(初期償却の制限)と保全措置、が定められている。 長期入院を理由に、事業者から一方的に解約できなくなる。条件を満たせば、都道府県知事へ登録できる。トラブル防止のため、行政には、報告・徴収、立ち入り検査や指示などの指導監督権限を持たせ、問題 がある事業者の物件は登録取り消しもあり得る。国土交通省・厚生労働省の共同所管。