きになる”福祉の時事ニュース

Vol.22  超高齢者のがん 在宅のがん   ~介護の視点編~

塚崎 朝子 氏 | ジャーナリスト

日本人の死亡原因の1位であり続けるがん。罹患数・死亡数とも増え続けている背景には、高齢人口増加の影響が大きい。9月は「がん征圧月間」だったが、超高齢者や在宅のがん患者に向き合うには、考えておきたいことがある。

超高齢者のがん、在宅のがん 支える介護者が知っておくこと

がん研究会がん研究所名誉所長の北川知行氏は90年代半ばから、「天寿がん」という概念を唱え、「さしたる苦痛もなしに、あたかも天寿を全うしたかのように人を死に導く超高齢者のがん」と定義している。北川氏はかつて、90歳を過ぎても元気だった高齢者が、徐々に食欲が減退して痩せ、数カ月後に苦痛もなく眠るように息を引き取るというケースにいくつも遭遇した。解剖してみると内臓にがんがあり、死因となっていたことは分かったが、経過は自然死に近かった。
 
こうした経験から、男性は85歳以上、女性は90歳以上で、最小限の障害で平穏な死に至るがんを、「天寿がん」と呼ぶようになったという。超高齢者のがん死を、人の一生の自然な終焉のひとつのパターンと捉える考え方で、こうしたがんは数少ないながら実際に存在する。
 
天寿も人生観も個人差があるので、一概に天寿がんが、大往生ということにはならない。がんは征圧すべきものだが、患者の状況によっては、攻撃的な治療や延命治療に意味があるかと、今一度問い直してみる必要があると考えられる。
 

がん患者の生活を支え看取る

 
1981年、がんは脳血管疾患や心疾患を抜き、日本人の死因の1位になった。2007年に施行されたがん対策基本法を受けて、閣議決定された「がん対策推進基本計画」では、今後10年以内(17年まで)に達成すべき全体目標として、「がんによる死亡者の減少(75歳未満の年齢調整死亡率の20%減少)」と、「すべてのがん患者およびその家族の苦痛の軽減並びに療養生活の質の向上」をうたう。
 
基本3施策のうち、「均てん化」では、厚生労働省が指定するがん診療連携拠点病院は、全国で388カ所に増えた。とは言っても、すべてを病院で診ることは難しく、連携をしながら在宅医療を行い、訪問介護・看護を入れながら、看取りまでするケースも増加している。病院から見放されたような思いをすれば、患者は不安だが、家族のいる慣れた環境で落ち着いて暮らせることはメリットとなる。
 
独居のがん患者も増えており、その人らしい生活を支えるためには、ヘルパーやケアマネジャーの役割も重要である。次第に体力が低下し、いよいよ看取りの時期が近づけば、気丈にしていた患者の不安も増す。24時間体制で訪問介護を行うヘルパーステーションがない地域もある。このため、患者の経済力や、血縁や地縁などの社会関係資源などにもよるが、公的介護保険を超え、ボランティアや、時には自費のヘルパーのかかわりも必要になってくることがある。23年度の介護保険法改正で、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」(24時間訪問サービス)が新設されることになっており、期待が寄せられている。

Vol.22   超高齢者のがん 在宅のがん   ~介護の視点編~
つかさき・あさこ プロフィール
読売新聞記者を経て、医療・医学、科学・技術分野のジャーナリスト。経営学修士(MBA)、医療管理学修士。週刊エコノミストで「大人の悠遊 からだチェック!」、メディカル朝日で「命を紡ぎ出す〜再生医療の現場から」連載中。著書に『看護のための経営指標みかた・よみかた超入門』(共著、メディカ出版)ほか。東京医科歯科大学大学院医療政策学博士課程在籍。

補足資料ナナメ読み

【がん対策基本法】

死因の首位であるにもかかわらず、がんの医療は、地域によって治療水準などに格差が生じている問題を解消しようと、06年に超党派の議員立法として全会一致で成立。07年6月に施行された。自治体を含めた総合的な取り組みを法制化したもので、国と都道府県に対して「がん対策推進基本計画」策定を義務付けている。07年に閣議決定された国の基本計画では、重点的に取り組むべき課題に、①放射線療法・化学療法の推進とこれらの専門医等の育成、②治療の初期段階からの緩和ケアの実施、③がん登録の推進、を挙げている。また、個別目標として、すべての拠点病院において放射線療法及び外来化学療法を実施(5年以内)、未成年者の喫煙率を0%に(3年以内)、がん検診受診率を50%以上に(5年以内)、などを設定。計画内容は5年ごとに見直される。