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Vol.23  5年目のがん対策基本計画   ~医療の視点編~

塚崎 朝子 氏 | ジャーナリスト

9月は、1960年に定められた「がん征圧月間」だった。2007年に施行された「がん対策基本法」は、5年目を迎える。がん対策は前進しただろうか。

5年目のがん対策基本計画 予防や早期発見は前進したか

がん対策基本法を受けて、閣議決定された「がん対策推進基本計画」では、今後10年以内(17年まで)に達成すべき全体目標として、「がんによる死亡者の減少(75歳未満の年齢調整死亡率の20%減少)」と、「すべてのがん患者およびその家族の苦痛の軽減並びに療養生活の質の向上」をうたっている。
 
1981年以降、がん(悪性新生物)は、日本人の死因の第1位を占め続けている。遅まきながらも対策が奏功していると見えるのは、がん死亡率(人口10万人当たりの死者数)が、近年は漸減傾向にあることだ。それでも、罹患数、死亡数ともなお増加し続けているのは、急速な高齢化に伴う影響が大きい。
 
がんで命を落とさないためには、がんにならないことに尽きる。がんの悩みは万国共通らしく、世界保健機関(WHO)は、2002年に「国家がん管理プログラム(National Cancer Control Program)」をまとめている。中では、適切な対策を講じれば、がんの3分の1 は予防可能、3分の1 は早期発見によって救命可能、残る3分の1についても適切な治療とケアにより生活の質(QOL)が向上可能、としている。
 
禁煙、運動習慣、健康的な食習慣、適正体重の維持など、生活習慣の改善、すなわち一次予防が大事なことについて、医療関係者は周知している。加えて、どんなに理想的な生活をしていたとしても、2~3割はがんになる危険があることも知っている。であれば、がんになったとしても、早期に発見できたほうがよい。
 
国の基本計画では、12年までに「がん検診受診率50%以上」にする目標を掲げている。しかし、国民生活基礎調査(10年)によれば、男女とも過去1年間の受診率が最も高い胃がん検診でさえ、男性34.3%、女性26. 3%である。また、過去2年間に子宮がん・乳がん検診を受診した割合は、子宮がん32. 0%、乳がんは31. 4%にとどまる。この2つのがんの検診受診率は、経済協力開発機構(OECD)加盟国30カ国中の最低レベルにある。
 
お隣の韓国では、09年にはがん検診の受診率が53%に達している。その理由には、健康保険者が単一で住民登録番号を利用しI Tによる勧奨をしていること、費用が健康保険でカバーされ指定を受けた医療機関であれば全国どこでも受診可能なこと、CMやドラマなどメディアのキャンペーンやその影響を受けやすい国民性、などが挙げられている。さらに高水準のがん登録の仕組みがあって、その結果が検診にもフィードバックされて、精度管理にも役立っている2人に1人ががんになる時代、すべての医療機関は、連携によってがん医療の担い手の一部になることはもちろん、啓発という意味でもなすべきことは多い。

Vol.23   5年目のがん対策基本計画   ~医療の視点編~
つかさき・あさこ プロフィール
読売新聞記者を経て、医療・医学、科学・技術分野のジャーナリスト。経営学修士(MBA)、医療管理学修士。週刊エコノミストで「大人の悠遊 からだチェック!」、メディカル朝日で「命を紡ぎ出す〜再生医療の現場から」連載中。著書に『看護のための経営指標みかた・よみかた超入門』(共著、メディカ出版)ほか。東京医科歯科大学大学院医療政策学博士課程在籍。

補足資料ナナメ読み

【がん対策基本法】

死因の首位であるにもかかわらず、がんの医療は、地域によって治療水準などに格差が生じている問題を解消しようと、06年に超党派の議員立法として全会一致で成立。07年6月に施行された。自治体を含めた総合的な取り組みを法制化したもので、国と都道府県に対して「がん対策推進基本計画」策定を義務付けている。07年に閣議決定された国の基本計画では、重点的に取り組むべき課題に、①放射線療法・化学療法の推進とこれらの専門医等の育成、②治療の初期段階からの緩和ケアの実施、③がん登録の推進、を挙げている。また、個別目標として、すべての拠点病院において放射線療法及び外来化学療法を実施(5年以内)、未成年者の喫煙率を0%に(3年以内)、がん検診受診率を50%以上に(5年以内)、などを設定。計画内容は5年ごとに見直される。