きになる”福祉の時事ニュース

Vol.24  介護現場のたばこ対策は急務   ~介護の視点編~

塚崎 朝子 氏 | ジャーナリスト

2010年10月のたばこ増税から1年を経て、たばこ離れが加速しているが、介護現場の対策は遅れているようだ。

介護現場のたばこ対策は急務 要介護の原因と再認識すべき

 
日本たばこ産業の「全国たばこ喫煙者率調査」では、11年の成人男女の喫煙率は16年連続で低下し、前年比2.2%減の21.7%と過去最低であった。下げ幅は例年の倍で、高齢化の進展、健康に関する意識の高まり、喫煙をめぐる規制の強化に比べて、前年に実施された増税・定価改定の影響が大きいとされる。男女別では、成人男性33.7%(前年比2.9%減)、成人女性10.6%(同1.5%減)である。
 
専門職の喫煙率の高さはかねてから指摘されているが、例えば、日本医師会員喫煙意識調査(08年)では、男性15.0%、女性4.6%で、やはり着実に減少傾向にある。
 
ケア従事者のたばこ対策については、川崎医療福祉大学の三徳和子氏が、「高齢者ケア施設でケアに直接従事する者の喫煙率および喫煙と職業性ストレスの関連」として、老人施設従事者2720人(有効回答者2171人)を対象に05年に調査を実施している。喫煙率は男性51.0%、女性23.9%で、一般人口に比べて高く、特に女性は倍以上だった。
  
喫煙とストレスの関連では、男性の場合は、技能の活用度、働きがい、上司のサポート、女性は、職場環境、働きがい、活気、イライラ感のそれぞれの目的変数において関連が見られたという。一方、心理的な仕事の負担(質と量)、自覚的な身体的負担、対人関係ストレス、仕事のコントロール、仕事の適性、同僚のサポート、家族・友人のサポート、満足感との関連は見られなかったという。
  

たばこは予防可能なリスク

 
もちろん、職場のストレス対策は必要だ。しかし、喫煙が典型的なたばこ病とされる慢性閉塞性肺疾患(COPD)を始め各種のがん、心臓や脳の重大な疾患を引き起こし、アルツハイマー病のリスクにもなる。それらが要介護に陥った原因である状況を目の当たりにしながら、喫煙を続けるのは、たばこが中毒物質であるからだ。ニコチン依存症の治療に保険が適用されているのは、このためである。ストレス解消が目的とは大義名分で、喫煙自体がストレスを増やしている。
 
英国医学誌『Lancet』では11年9月に、日本の皆保険制度導入50周年を記念した特集号を発行して、日本が短期間で長寿社会を実現したことを高く評価する一方、07年における予防可能な危険因子として、喫煙と高血圧を指摘している。喫煙の健康への悪影響が高齢層で蓄積しつつあり、喫煙関連死が増加傾向にある可能性に言及している。また、全成人が禁煙すれば、男性で1.8年、女性で0.6 年、平均寿命が延伸すると推計している。
 
中央社会保険医療協議会は、子どもが受診する医療機関では、原則的に屋内全面禁煙とする方針を了承しており、12年度から診療報酬の要件になる見込みだ。たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約でも、職場等におけるたばこからの保護措置を求めている。介護現場のたばこ対策に真剣な議論が必要だろう。

Vol.24   介護現場のたばこ対策は急務   ~介護の視点編~
つかさき・あさこ プロフィール
読売新聞記者を経て、医療・医学、科学・技術分野のジャーナリスト。経営学修士(MBA)、医療管理学修士。週刊エコノミストで「大人の悠遊 からだチェック!」、メディカル朝日で「命を紡ぎ出す〜再生医療の現場から」連載中。著書に『看護のための経営指標みかた・よみかた超入門』(共著、メディカ出版)ほか。東京医科歯科大学大学院医療政策学博士課程在籍。

補足資料ナナメ読み

【たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(WHO Framework Convention on Tobacco Control;WHO/FCTC)】

たばこの消費およびたばこの煙にさらされることが健康、社会、環境および経済 に及ぼす破壊的な影響から、現在および将来の世代を保護することを目的としている。職場等の公共の場所におけるたばこからの保護措置、消費者に誤解を与えない包装及びラベル表示、未成年者対するたばこ販売の禁止措置などの規制と、たばこの規制に関する国際協力について定めている。世界保健機関(WHO)の下で作成された保健分野における初めての多国間条約で、2003年5月のWHO総会において全会一致で可決され、05年2月に発効した。各国が個別に実施していたたばこ対策を一歩進め、自国内や国際的に実施するたばこ規制の枠組みを提供している。通称、たばこ規制枠組条約、または、たばこ規制枠組み条約と呼ばれる。