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Vol.28  透析患者高齢化と認知症増加   ~介護の視点編~

塚崎 朝子 氏 | ジャーナリスト

現時点で約30万人いる透析患者は、今後毎年約1万人ずつ増加するとも見られている。高齢化する患者をどう支えるかは喫緊の課題になっている。

透析患者高齢化と認知症増加 要介護者受け入れは緊急課題

 
日本透析医学会が毎年公表している透析患者の現況調査(10年12月31日現在)によれば、20年以上の透析患者数は2万1411人と、全透析患者の7.5%で漸増基調にある。
最長では透析歴が42年8 カ月に及び、透析は、呼吸、栄養と並ぶ有用な救命手段であることが伺える。
 
09年から認知症、生活活動度、生活場所についての調査が加わっている。10年末現在で「認知症あり」は2万3321人で、透析人口全体の9.9%に達していた。
 
治療法別では、施設血液透析患者の認知症合併率が10.3%で最も高く、血液透析濾過患者は6.6%である。一方、腹膜透析患者では認知症合併率は5.9%とかなり低く、在宅透析として腹膜透析を適応するには、患者に一定の認知能力が要求されるためと見られている。
 
認知症合併の有無によって年齢と生活場所を見ると、認知症合併のない患者は加齢と共に施設入所あるいは入院する傾向があるのに対し、合併のある患者は、どの年齢層においても施設入所あるいは入院が満遍なく多くなっている。
 

積極的受け入れの老健や高専賃も

 
一般に介護老人保健施設では、透析患者の受け入れは困難なことが多いが、独居高齢者や老老介護の増加で、マンパワーの点で在宅も難しいという状況がある。高齢化する患者を医療・介護の両面から支える受け皿として、医療法人社団清光会(神奈川県逗子市)では、「介護透析」という概念を唱えている。
 
同会では、有床診療所(19床)に老健(定員100人)を併設しており、07年には人工透析部門(37床)を立ち上げた。認知症が悪化したり、日常生活に支障を来すなどで外来透析が困難である患者を受け入れ、透析医療に加えて、食事・介護・リハビリテーションを一体的に提供している。神奈川県内で、透析患者を受け入れている老健は2カ所しかないため、県内全域や近隣都県からの引き合いも多く寄せられているという。
 
また、兵庫県伊丹市では、透析医療を手掛ける医療法人社団星晶会が、在宅透析が行える高齢者専用賃貸住宅(19戸、デイサービス併設)を運営している。入居者は、個人専用透析機械とベッドを使用し、2日に1回の透析を受けることができる。傘下クリニックで定期的な健康管理も実施されるほか、栄養士による透析食の提供、24時間対応の見守りや病院との連携体制もあり、病態急変時にもスムーズに対応できるようになっている。
 
国民総医療費約36兆円のうち、透析医療は実に1.4兆円以上を占めており、これ以外に介護や福祉の費用もかかる。高齢患者の増加で、さらに膨らむことは必至である。
透析に陥らないよう、糖尿病や腎疾患の管理は最重視すべきだが、高齢患者の対策も急務だと言える。

Vol.28   透析患者高齢化と認知症増加   ~介護の視点編~
つかさき・あさこ プロフィール
読売新聞記者を経て、医療・医学、科学・技術分野のジャーナリスト。経営学修士(MBA)、医療管理学修士。週刊エコノミストで「大人の悠遊 からだチェック!」、メディカル朝日で「命を紡ぎ出す〜再生医療の現場から」連載中。著書に『看護のための経営指標みかた・よみかた超入門』(共著、メディカ出版)ほか。東京医科歯科大学大学院医療政策学博士課程在籍。

補足資料ナナメ読み

【透析患者の現況】

日本透析医学会発行『わが国の慢性透析療法の現況(2010年12月31日現在)』によれば、国内の透析患者数は29万7126人で、同年の新規導入患者は3万7532人と2年続けて減少している。年齢および性別記載者では、男性が2万4753人と、女性1万2682人の2培近い。導入時平均年齢は67.8歳(前年比0.5歳上昇)で、男性66.9歳(0.5歳上昇)、女性は69.5歳(0.4歳上昇)であった。男性が70~75歳(15.5%)、女性は75~80歳(16.4%)での導入が最も多い。全患者の原疾患は、第1位は慢性糸球体腎炎で10万3864 (36.2%)で、第2位の糖尿病性腎症の10万2788人(35.8%)と拮抗している。3位は腎硬化症の2万1630人7.5%)。新規導入患者の原疾患は、第1位が糖尿病性腎症の1万6271人(43.5%)、第2位が慢性糸球体腎炎の7946人(21.2%)である。糖尿病性腎症は右肩上がりで増え続けていたが、08年に減少に転じ、09年は1.2%増えたが、再度減少した。