きになる”福祉の時事ニュース

Vol.29  透析患者30万人で年1万人増加   ~医療の視点編~

塚崎 朝子 氏 | ジャーナリスト

高齢化の進展と糖尿病患者の急増などを背景に、現在でも約30万人いる透析患者は、今後毎年約1万人ずつ増加するとも見られており、患者の爆発は予断を許さない状況にある。

透析患者30万人で年1万人増加 医療費負担増にどう向き合うか

 
人工透析は、呼吸や栄養と並ぶ延命手段であるが、患者の日常生活は制限され、その質(QOL)も低下する。対症療法である透析に対し、根治療法と言えるのは腎移植であるが、日本臓器移植ネットワークによれば、2011年11月末時点で、腎移植希望者1万2388人に対して、同11月末までに実際に実施された腎移植は197件と、改正臓器移植法施行後も慢性的ドナー不足は変わらない。ドナー登録後の平均待機期間は、14年以上とされる。移植後は生涯にわたり免疫抑制剤を服用しなくてはならず、副作用とも戦わなくてはならない。
 
11年6月には、腎不全で透析加療中の医師が、暴力団組員に偽装の養子縁組の斡旋を依頼し、腎臓提供を受けていた事件が発覚した。臓器移植法は臓器売買を禁じており、医師のほか、仲介者など5人が逮捕されている。
 

修復腎移植や再生医療も

 
この執刀を担当したのが、病気腎移植で有名になった宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師だ。その徳洲会グループでは、第三者間の病気腎移植を09年12月から臨床研究として開始し、11年9月までに9例を実施しており、移植した患者にがんの発症は見られていないという。
 
こうした実績を受け、同院などは、病気腎(修復腎)移植の先進医療の適用を11月に厚生労働省に申請した。当初は夏の申請を予定していたが、売買事件で延期されていた。専門家の審議により可否の結論が出るまで約3カ月かかるが、認められれば、手術代など80万円を除き、残る診療には健康保険が適用される。
 
もう1つの根治療法と目されるのが、再生医療だ。軽症の急性腎不全患者を対象に、幹細胞を輸注して改善を図る研究はこれまでもあったが、東京慈恵会医科大学の横尾隆氏らが手掛けているのは、腎臓を丸ごと再生しようという取り組みだ。ヒト骨髄由来の間葉系幹細胞を用いて、尿を生成する腎臓をラット体内で形成しており、同様にブタ
の胎児の体内で作り出した腎臓を、ネコの腹膜に移植して尿を生成させ実験にも成功している。
 
医療費に目を転じると、国民総医療費約36兆円のうち、透析医療は実に1.4兆円以上を占めており、これ以外に介護や福祉の費用もかかる。人口の約430分の1の透析患者に対し、国民が負担している費用は膨大で、医療はこの問題に真剣に取り組まなくてはならない。
 
因みに、糖尿病の医療費も1.2兆円に達している。患者数は桁違いに多いとは言え、人工透析に陥る前の段階で歯止めをかけることは重要である。10月の中央社会保険医療協議会には、多職種が協力して糖尿病の外来患者に早期に重点的な指導を行った場合に、診療報酬改定で評価することが提案されている。
 

Vol.29   透析患者30万人で年1万人増加   ~医療の視点編~
つかさき・あさこ プロフィール
読売新聞記者を経て、医療・医学、科学・技術分野のジャーナリスト。経営学修士(MBA)、医療管理学修士。週刊エコノミストで「大人の悠遊 からだチェック!」、メディカル朝日で「命を紡ぎ出す〜再生医療の現場から」連載中。著書に『看護のための経営指標みかた・よみかた超入門』(共著、メディカ出版)ほか。東京医科歯科大学大学院医療政策学博士課程在籍。

補足資料ナナメ読み

【透析患者の現況】

日本透析医学会発行『わが国の慢性透析療法の現況(2010年12月31日現在)』によれば、国内の透析患者数は29万7126人で、同年の新規導入患者は3万7532人と2年続けて減少している。年齢および性別記載者では、男性が2万4753人と、女性1万2682人の2培近い。導入時平均年齢は67.8歳(前年比0.5歳上昇)で、男性66.9歳(0.5歳上昇)、女性は69.5歳(0.4歳上昇)であった。男性が70~75歳(15.5%)、女性は75~80歳(16.4%)での導入が最も多い。全患者の原疾患は、第1位は慢性糸球体腎炎で10万3864 (36.2%)で、第2位の糖尿病性腎症の10万2788人(35.8%)と拮抗している。3位は腎硬化症の2万1630人7.5%)。新規導入患者の原疾患は、第1位が糖尿病性腎症の1万6271人(43.5%)、第2位が慢性糸球体腎炎の7946人(21.2%)である。糖尿病性腎症は右肩上がりで増え続けていたが、08年に減少に転じ、09年は1.2%増えたが、再度減少した。